京都大学は9月8日、TDK、秋田県産業技術センターと共同で、スピンMOSトランジスタの室温動作を実現したと発表した。
同成果は、同大 工学研究科の白石誠司教授、安藤裕一郎助教、TDKの佐々木智生技師らによるもの。詳細は、米国物理学会科学誌「Physical Review Applied」のオンライン版に掲載される予定。
シリコンを用いたスピンMOSFETは、シリコンがほぼ無尽蔵に自然界に存在し無毒であること、シリコンでは情報伝播に用いるスピン角運動量が比較的長時間保持できることが期待されること、さらに従来のシリコンエレクトロニクスにおける技術面・インフラ面での蓄積がそのまま利用可能であることから、世界中でその実現に向けて活発に研究が進められてきた。
ただし、シリコンスピンMOSFETを実現するには、シリコン中でスピンの伝導を実現すること、さらにその伝導を外部電場で制御することが必要となる。前者については、2011年に研究グループがn型シリコンで、2013年には白石グループがp型シリコンで、それぞれ室温で実現していたが、スピンの伝導が縮退半導体領域のシリコンでしか実現していなかったため、後者の実現が困難だった。
そこで、研究グループは室温におけるシリコン中のスピン伝導の検証と磁気抵抗効果の観測を行った。その結果、室温において非縮退シリコン中での室温スピン伝導に成功したことが確認されたという。
研究グループでは、今回の成果が、半導体スピントロニクス分野のさらなる発展と新機能論理回路に実現に向けた大きなマイルストーンが達成されたことを意味しており、基礎学理・産業応用の両面で重要であるとコメントしている。