無料POSレジアプリ「Airレジ」を提供するリクルートライフスタイルは8月28日、東京都・銀座の「Apple Store, Ginza」にて「スマートデバイスで変わる外食産業の未来像」と題したトークカンファレンスを開催した。
同イベントには、ITジャーナリストの林信行氏や、鳥貴族で専務取締役を務める中西卓己氏、お笑いコンビ「キャイ~ン」の天野ひろゆき氏が参加し、ITと飲食業界の今後について率直な意見交換が行われた。
Airレジ(エアレジ)とは、小売業や飲食業、各種サービス業に必須のレジ業務を、スマートフォンやタブレットで行うことのできる完全無料のPOSレジアプリ。入力されたデータはクラウド上で保管され、時間場所を問わず閲覧可能なほか、リアルタイムな入店状況や売上といったデータも見ることができる。
また、モバイル決済サービス「Square」や全自動のクラウド会計ソフト「freee」などとの連携もしており、店舗のコスト削減や業務負荷を軽減するようなサービスも提供する。
リクルートライフスタイルで執行役員を務める大宮英紀氏は、「飲食店の約半数は、2年以内に閉店となっており、その原因は機材の導入などのコスト面にある。そこに対してイノベーションを起こしたいという思いでPOSレジを再開発し、Airレジが誕生した」と、今までの経緯を語った。
2013年11月からサービス提供を開始し、約4ヶ月後の2013年年度末にはアカウント数が4万を突破。14年度の目標であった10万アカウントも、年内に達成できる見込みだという。
消費者側への変化に、飲食産業が追い付いていない現状
モバイルデバイスが普及して、飲食業界にどのような変化が起こったのだろうか。
同社が提供する飲食店情報と割引クーポンを満載したグルメサイト「HOTPEPPER グルメ」では、2013年度に同サイトの予約サービスを利用して来店した消費者の総数(送客数)が、約1000万人であったほか、2014年度の送客数は、8月時点で前年度比200%増を見込んでいるという。
同社でHOTPEPPER グルメ プロデューサーを務める南裕樹氏は、インターネットを通じて予約をする人が増加した理由を、「簡単で手軽に利用できることや、24時間利用できること、ポイントが貯まることなどがある」と説明した。
また、同氏は「モバイルデバイスの普及も、インターネット予約サービスの利用者増加を推し進める要因になっている」とした。2012年、同サイトの利用者の約8割は、PCやフューチャーホンによって閲覧していたが、2014年8月時点では、スマートフォン利用者が70%以上となるという。
ITジャーナリストの林信行氏は、自身がヨーロッパへ渡航した際に立ち寄った飲食店を例に挙げ、「メニューそのものや注文も、デバイスを利用して行えるようになっている。他言語なんかにも対応していて、国際化への対応も実現している」として、自身が感じた変化を語った。
このように、モバイルデバイスの普及は、飲食店利用者に対し利便性や手軽さを提供した。一方で、飲食店側に変化はあったのだろうか。
南氏は、「ネットを通じて入った予約や空席もの管理は、紙の予約台帳を使用しているところが多い」とし、それに対するリスクとして、「記入ミスや紛失などの運用リスクや転記作業の負担、Webサイトでの席情報の管理負担などがある」と説明。「ネットでの予約が増えるほど、飲食店側の負担は大きくなる構図がある」とし、飲食店利用者側への変化の速さに、飲食店側は追い付いていない現状を語った。
このような背景を踏まえ、同社は、AirレジとHOTPEPPER グルメの連携を開始している。
Airレジに搭載された予約台帳機能では、「ネット予約の自動同期機能」や「電話予約の登録機能」「顧客情報の同期機能」「空席情報の同期機能」などを提供。「ネット予約の自動同期機能」では、名前や人数、予約時間などの入力ほか、画面上のドロップ&ドラッグで席の登録も行えるため、空席の管理も可能となる。また、ネット予約・電話予約問わず、同期した利用者の氏名などから「何度目の利用か」や「前回の来店はいつか」なども自動で反映される「顧客情報の同期機能」とも連携するという。
「空席情報の同期機能」では、Airレジの予約台帳を基に、空席情報をHOTPEPPER グルメへと反映することができるほか、リアルタイムで情報が更新され、満席状態では、自動的に予約機能を停止する。これにより、「効率的な集客が可能になる」という。なお、データはクラウド上に保管されるため、場所や時間を問わず、閲覧できるほか、他店舗の情報も確認することが可能だ。
ITが変える未来の飲食産業像とは
同トークセッションに参加した鳥貴族 専務取締役の中西卓己氏は、「仕事量の削減や簡易化などで、人材の教育コストなどが減れば、顧客満足度へと還元できる。こういった部分をサポートしてくれる機能があれば」とした一方、「(飲食産業は)IT技術を導入にあたって、その操作性や利便性などの情報・知識が不足していたり、新しいツールそのものへの抵抗があると感じる」と課題を挙げた。
また、林氏も、「Airレジなどのサービスで、顧客や店舗、会計など経営に関わる情報がレジに集約してくるのでは」と、ITによる今後の変化を予測したほか、「(飲食産業での)人材育成や顧客満足度の向上に、貢献していくことに期待したい」という。
飲食店利用者の代表として参加したキャイ~ンの天野氏は、「スマートフォンなどが普及する前は、ウドちゃんが店舗に電話したり直接行ったりして、空席情報の確認や予約を行っていたため、お店は『いつも行くところ』になりがちだった」とした上で、「今は、自分のニーズに合ったお店をネットで検索できるから、新しいお店に気軽に挑戦できるようになったと思う」と、自らの変化を語った。
同氏は、今後、「よく個室を利用する人には、個室の空いている店舗のレコメンドがあったり、事前に注文や決済ができて、席についたらすぐ食べれて、食べ終えたらすぐ出れるみたいな、そんな機能があったら嬉しい。よりパーソナライズ化していってほしい」とした。