結核菌特有の成分を認識して免疫系を活性化するタンパク質を、九州大学生体防御医学研究所の山崎晶(やまさき しょう)教授と千葉大学真菌医学研究センターの西城忍(さいじょう しのぶ) 准教授らが発見した。このタンパク質は免疫を担う樹状細胞の受容体のデクチン2で、結核菌特有の糖脂質のリポアラビノマンナン(LAM)に反応する。この仕組みを利用すれば、結核だけでなく、さまざまな感染症やがんに対するワクチンの効果を高める可能性があるという。8月28 日付の米科学誌Immunityオンライン版に発表した。

図1. デクチン2を欠損したマウスでは野生型マウスと対照的に、LAMによる獲得免疫活性化が起きないことを示すデータ(提供:九州大学)

結核菌の LAMは免疫系の活性化と抑制の両方の働きを持つことが知られていたが、その多様な機能を説明する仕組みは謎だった。研究グループは、結核菌を認識して樹状細胞の免疫機能を活性化する受容体としてデクチン2を見いだした。さらに、デクチン2は、結核菌の中で最も多く含まれる水溶性のLAMを受け取って、樹状細胞の免疫活性を高めて、結核菌を排除するように作用していることを突き止めた。

図2. LAM-デクチン2を介する免疫活性化の仕組みと期待される効果(提供:九州大学)

デキチン2を欠損したマウスは、LAMによる獲得免疫活性化が起きないことを確かめた。また、LAMを認識したデクチン2は、樹状細胞を活性化するだけでなく、過剰な免疫の活性化を抑制し、高度に免疫系を調節する受容体であることも実証した。一連の実験と解析で、デクチン2がLAMの多様な機能を説明する受容体であることを初めて明らかにした。

山崎晶教授は「われわれが発見したLAM-デクチン2の免疫活性化の仕組みは、ワクチンを強化するのに役立つ。LAMをワクチンに加えれば、ヒトの樹状細胞のデクチン2が働いて免疫機能を調節するのではないか。感染症やがんに対するワクチンの効果を高める効果が期待できる」と話している。