岡山大学は、歯周病の原因細菌の1つ「ポリフィロモナス ジンジバリス菌」に対する血液中の免疫グロブリン G抗体価が高い歯周病患者では、動脈硬化に関わる悪玉コレステロール値が高いことを臨床観察研究により突き止めたと発表した。
同成果は、同大大学院医歯薬学総合研究科歯周病態学分野の工藤値英子 助教と高柴正悟 教授らによるもの。詳細は日本の英文歯科学雑誌「Odotology」に掲載された。
今回研究グループは、東京都と千葉県の開業医のコンソーシアムと共同で3年2カ月の間、臨床観察研究を実施。具体的には、平均年齢60歳の男女各45人(計90人)の歯周病状態を臨床観察と歯周病の原因細菌の一種である「ポリフィロモナス ジンジバリス菌(Porphyromonas gingivalis)」の感染度を血液で検査したほか、併せて、動脈硬化の状態を超音波検査と動脈硬化に関わる血液中の因子の検査を実施したという。
この結果、ポリフィロモナス ジンジバリス菌に対する免疫グロブリンGの値が高い患者では悪玉コレステロールで、高脂血症を含めた脂質代謝異常症に関わることが知られているほか、動脈硬化が起こる際に血液中の量が増加することが知られている「低比重リポタンパク(LDL-C)」の値が高いことが判明したという。
これまでの研究から、歯周病が動脈硬化、心血管障害、糖尿病などに影響を及ぼすと考えられていたが、今回の成果により、ポリフィロモナス ジンジバリス菌の感染度を血液で検査することの有用性が示されたこととなった。そのため研究グループでは今後、この検査方法を用いて歯周病との関連を調べることで、これらの疾患の原因解明につながることが期待できるとコメントしているほか、成人のほとんどが罹っているといわれる歯周病の重症度を調べる検査指標としても使用することで、これらの疾患に対する適切な治療の提案が可能になると説明している。