2014年9月10日、セミナー「「顧客と密接な関係」が作れるか!!企業価値を創出するCRM戦略とは」がベルサール新宿グランド Room Mで開催される。セミナーの基調講演には、良品計画 WEB事業 コミュニティー担当 課長 川名常海氏が登壇。同氏のセッション「MUJI (DIGITAL) MARKETING 3.0」では、「無印良品」ブランドのデジタルマーケティングの取り組みを中心に、その顧客接点の考え方が披露される予定だ。本稿では講演に先立ち、同社がこれまでのブランド活動に対し顧客をどのように統合し、デジタル時代にそれをどう加速させているのかについて話を聞いた。

「顧客と密接な関係」が作れるか!!企業価値を創出するCRM戦略とは」の参加申し込みはこちら(参加費無料、9月10日(水)開催、東京都新宿区、開場13:30~)

無印良品ブランドの根底に流れ続ける「三方よし」の理念

株式会社良品計画 WEB事業 コミュニティー担当 課長 川名常海氏

「無印良品」の根底にある理念は、かつての近江商人が唱えていた「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」という「三方よし」の言葉だ。企業にとって、良い商品をつくりお客に喜んでもらうというのは一般的だが、それにもう1つ、社会や世の中、地域という視点を入れ、この三角形のバランスを取ることに重きをおくのが、「三方よし」の考え方なのである。

「無印良品というのは、単にシンプルなものをつくろうというだけではなく、根底に『三方よし』があって、簡素なライフスタイルの中に秘めた知性や感性を、商売を通して伝播できれば、生活者の生活を少ない資源で豊かにすることができる。そんな理念が根付いているのです」と川名氏は言う。

「三方よし」を大事にする無印良品だからこそ、顧客との声のキャッチボールに力を入れ続けてきた。今では年間約20万件もの顧客の声が寄せられ、様々なかたちで商品にフィードバックされているのである。

店舗vsネットから双方の補完関係へ

そんな無印良品を展開する良品計画が、デジタルマーケティングに力を入れだしたのは2000年頃のことだ。インターネットで顧客の声を取り入れようと始めた「モノづくりコミュニティー」では、顧客とのコラボレーションから大ヒット商品も生まれた。例えば「体にフィットするソファ」もその1つだ。中身にビーズを使用することで体の一部をうまくフィットさせるこのソファは、あまりの座り心地の良さから「人をダメにするソファ」とも呼ばれて絶大な人気があるという。

そしてネットコミュニティーを立ち上げるのと同時期にEコマースも開始したのだが、当初は店長からの反発も強かったという。

「たまたまネットの売上が良くて店舗が悪かったりすると、“ネットに売上を取られた”といった批難の声も寄せられたりしました」(川名氏)

そんな状況に変化があらわれだしたのは、2003年頃からだ。顧客へのヒアリングを行ったところ、Webサイトを訪れる人でネットストアでの購入経験があるユーザーは4割しかなく、残りの6割は店舗で買い物をする前に、商品のチェックやキャンペーン情報を入手するためにサイトを利用しているということが判明したのである。

「例えば、あるお客様がWebサイトで商品情報を調べて来店して、家に帰ってから店に何かを問い合わせたり、モノづくりコミュニティーに参加して“もっとこうして欲しい”と要望を投稿したり、カタログで調べてから来店し家でネット注文したりなど、様々な購買行動が見えてきました。ならば、店舗とネットは対立関係ではなく、双方がうまく連携しながら補完関係を描くのがお客様にとって一番いいかたちなのでは、と考えるようになったのです」と川名氏は振り返る。

店舗側もネットを活用すればお客に足を運んでもらえることを身をもって認識したことで、積極的にECサイトの会員獲得に動くなど社内での考え方も変わってきた。そうして店舗とネットとの相乗効果が生まれ、ECサイトの会員も売上も急速に増えていったのである。

オムニチャネル時代の顧客接点のあり方を示す

そして2009年頃より良品計画が提唱しているデジタルマーケティングのコンセプトが、「MUJI (DIGITAL) MARKETING 3.0」だ。情報過多でモノが余り、そして不況が続く時代、ブランドが生き残る手段としてブランドの意志を強く打ち出し、それに賛同する特定の顧客とのエンゲージを高めていくというコミュケーション戦略を、良品計画ではデジタルマーケティングを活用しながら進めているのである。

「TwitterやFacebookを使うことで、かつてはコストをかけて調査してもなかなか聞けなかったお客様の本音がたくさん聞けるようにもなりました。お客様とのコミュニケーションの図式が大きく変わりましたね」(川名氏)

では、「MUJI (DIGITAL) MARKETING 3.0」では具体的にどういったオムニチャネルの取り組みを実施し、無印良品の顧客接点はどう変化したのか?──9月10日に開催されるセミナーの川名氏の講演では、話題となった事例なども交えて紹介される予定だ。

「ブランドの意思がお客様に見えてくるようにする我々のデジタルマーケティングの手法は、業種や規模にかかわらず多くの企業で実践できるはずです」と川名氏が言うように、ぜひ同氏の講演を聞いて、自社のデジタルマーケティング戦略、そして顧客とのコミュニケーションのあり方に役立てていただきたい。