島津製作所は8月29日、クロマトグラフの最大の特徴である分離検出の能力を最大限に高め、従来は困難だった構造類似化合物の高分離分析を実現する包括的2次元クロマトグラフ「e-Series」を発表した。
同シリーズは、イタリア・メッシーナ大学のモンデロ教授との共同研究の成果を実用化したもので、LC(液体クロマトグラフ)をベースとしたLC×LCシステム「Nexera-e」と、GC(ガスクロマトグラフ)・GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)をベースとしたGC×GCシステム「Ultra-e」がラインアップされており、専用ソフトウェア「ChromSquare」によりデータ解析を行うことができる。
「Nexera-e」は、従来のHPLC(高速液体クロマトグラフ)より高いピークキャパシティ(理論上分離可能な最大ピーク数)で、天然物抽出液などに含まれる構造が類似した化合物を高分離で分析できる。通常、LC×LCシステムの1次元目の分離系は低流速による分析、2次元目では短時間周期での超高速分析を行うが、「Nexera-e」の送液ユニットである「LC-30AD」は、優れた耐圧と送液安定性を有しており、1次元目および2次元目の分離系双方で幅広い分離条件を選択できる。
また、細胞膜の主成分で、脂肪肝や高脂血症の予防などをつかさどるリン脂質や、ワインなどに多く含まれ、抗酸化作用により生活習慣病の予防に有効なポリフェノール類は、多くの構造類似成分で構成される。各成分は機能性が異なるために個別の分析が求められるが、従来の分析手法ではそれぞれの成分に分離して検出することが困難だった。この他、画期的な新薬の開発がより難しくなる中、中国などで広く使用されてきた漢方薬が注目されている。漢方薬の働きを科学的に調べ、その結果を新薬開発に生かすためには、原料となる生薬中の有効成分の探索が必要だが、生薬は多成分混合品であるため、その評価・研究には優れた分離能が必要とされる。「Nexera-e」では、分離能力を通常のHPLCの5倍以上に向上させており、複雑な試料中の目的成分を精度よく検出することが可能なため、新薬や機能性食品などの研究開発や品質管理業務の高度化・効率化を支援する。
そして、同シリーズは、質量分析計と組み合わせることで、優れたシステムの性能をさらに発揮することができる。「Ultra-e」は、GC×GCの分析を実現した四重極型GC-MS(ガスクロマトグラフ質量分析計)「GCMS-QP2010 Ultra」と、専用ユニットおよび解析用ソフトウェア「ChromSquare」で構成されており、例えば、「GCMS-QP2010 Ultra」に搭載されたUFMS(Ultra Fast Mass Spectrometry)技術を生かすことで、香料中に含まれる接触アレルギーを引き起こすアレルゲンの定量や、軽油や灯油などの成分解析など、揮発性成分を主として、従来のGCでは行えなかった多成分の一斉分析が実現する。また、容量の大きなデータも、「ChromSquare」のみで煩雑な手順を必要とせずに解析できる。さらに、「Nexera-e」も質量分析計との接続が可能。UFMS技術を搭載したトリプル四重極型液体クロマトグラフ質量分析計「LCMS-8050」と接続することで、分離した試料の質量分析を超高速・高感度で行うことができる。このように、同社が強みとするクロマトグラフ技術と質量分析技術の組み合わせにより、高度な分析を行っているユーザーをサポートするとしている。
この他、同シリーズの解析用ソフトウェア「ChromSquare」は、1つの画面内に等高線プロット、2次元目のMSスペクトルとMSクロマトグラムを表示でき、必要な情報をひと目で確認できる。また、1つの画面内で3つのパネルを切り替えながら操作することで、定性から検量線の作成など、定量までの必要な作業が可能となっている。このように、豊富な情報を簡単に解析でき、直感的な操作でユーザーをサポートする。
なお、価格は、「Nexera-e」がLC×LCシステム版「ChromSquare」を含んで1761万円(税抜き)から、「Ultra-e」がGC×GC-MSシステム版「ChromSquare」を含んで2457万円(税抜き)から。