日立製作所とシンガポール共和国の科学技術研究庁(A*STAR)傘下の電力グリッド研究センター(EPGC)は8月26日、シンガポールの建築建設庁(BCA)の協力のもと、先進の熱電協調制御システムを新たに構築し、EPGC施設内において実証運用を開始したと発表した。

今回構築した熱電協調制御システムは、EPGCの持つエネルギー技術と、日立が開発・実用化している省エネ空調制御システムの専門ノウハウを組み合わせて開発したものである。同システムは、既存の発電システムと、これまで大気に排出されていた発電機からの余剰排熱を空調の動力源として利用する空調制御システムの2つを統合して制御する。同システムをビルに適用すれば、余剰排熱を空調に利用できるため、発電機をフル稼働させる必要がない。ビルには、電力と空調設備の動力エネルギーを供給しながら制御を行う機能が備わることで、エネルギー効率を向上させることができる。EPGCと日立は、熱電協調制御システムの導入により、発電システムだけで36%、ビル全体では52%のエネルギー効率の向上が図れると見込んでいるという。

熱電協調制御システムの実証運用は、EPGCと日立が推進する3年間にわたる共同研究プロジェクトにおける重要なマイルストーンである。今後、A*STARと日立は、同システムの運用を通じて、サステナブルな環境配慮型都市を目指した研究を促進していくとしている。

熱電協調制御システムを組み込んだコージェネレーションパイロットプラントの概要。同パイロットプラントでは、発電機の余剰排熱を空調設備の動力エネルギーとして利用し、最も省エネ・省コストを実現する運転ポイントで空調設備を制御する。具体的には、ディーゼルエンジンの排気からの排熱は、温水(90℃)として回収される。回収された温水は、吸収式冷凍機へと供給され、空調用の冷水(7℃)を生成する。また、熱と冷熱の需給バランスを整えるために、温水槽、冷水槽をフレキシブルに運用することができる。さらに、需給の状況に合わせて高効率に運転できるように、ポンプ、冷却塔ファンにはインバータが設置されており、冷凍機も冷水温度可変型の冷凍機が採用されている。開発した熱電協調制御システムを導入することで、シミュレーションを用いた最適化演算により求めた設定値でビル内の全ての機器を効率的に運転し、エネルギー効率向上と省コストを実現するとしている