キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は8月26日、MR(Mixed Reality)システム「MREAL(エムリアル)」を使用し、3D仮想映像空間内に実在の人物全体を正しい前後関係にてリアルタイムに合成表示する「人物合成映像システム」の提供を開始する。
MRシステム(複合現実感)とは、現実世界の映像とコンピュータグラフィックス(CG)を融合し、仮想現実(Virtual Reality)よりもリアルな映像を生成する映像情報処理技術。同社の提供するMREALでは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)に内蔵された左右一対のビデオカメラによって撮影された現実世界が、PCへと送られた後、画像処理や位置検出センサーなどの位置合わせ技術を用いてPC内のCG映像と融合し、HMDに搭載された小型表示ディスプレイに表示されるほか、「光学システム」によりディスプレイの映像を拡大し、臨場感のある立体映像を提供する。
同社は、今回、このMREALを用いた「人物合成映像システム」の提供を、建築・建設業や製造業などを中心に開始。設計レビューや作業性検証などにおいて、実在の人物を仮想空間内で正しい位置関係で表示し、体型や姿勢、動きなどを同時に把握することで、より現実に近い検証作業を提供する狙いだ。
同システムでは、現実映像上の特定の色を仮想映像上に重ねて表示するMREAL Platformの「カラーマスキング機能」を応用。特定の色(クロマキー背景色 : 緑または青)以外の映像を対象とすることで、実写映像から人物全体を抽出するほか、3Dステレオカメラの視差を利用した「リアルタイム画像処理」により、空間内の人物の位置を推定し、人物と仮想物体との前後関係を正しく反映して表示する。
これにより、建築物や車両・大型機械など、視野全体に仮想物体が広がるようなコンテンツでは、体の位置や姿勢、仮想物体と人との関係、人同士の位置関係などを把握でき、より正確な検証作業を実現するという。
また、HMDを使うユーザー視点の「主観映像」と、外部定点カメラを使い空間を俯瞰的に捉える「客観映像」の2つの表示方法に対応。複数の作業者が互いの位置を確認するといった用途にはHMDの主観映像を用い、多人数で空間全体における動線や全体配置を検討するような用途には大型モニターによる客観映像を使用するなど、用途に応じて使い分けることが可能だ。
同システムは、先行導入として、大和ハウス工業の戸建住宅体感施設「TRY家Lab」の「トライエ ヴァーチャル」に採用されている。提供には、ハードウェアのほか、ユーザーの用途に沿った施設やソフトウェアが必要となるため、キヤノンITSがニーズに合わせた構成によりMREALをカスタマイズするという。なお、価格も仕様ごとに異なり、別途見積が必要だが、同社は「予想価格は概算で2000万円程度」としている。
販売は、キヤノンITSのほか、キヤノンマーケティングジャパン(MA販売事業部)とMREAL販売パートナーが実施。同社は、販売開始より1年後となる2015年第3四半期までに20システムの納入を目指す考えだ。