島津製作所と武田薬品工業は8月25日、新たに合成した化合物を精製する際に行うHPLC(高速液体クロマトグラフ)での分取の可否判定と、分取可能となる条件を容易に決定できる逆相精製自動スケールアップシステム「ASAPrep」を共同開発したと発表した。
製薬メーカーや大学、研究機関などで行っている新規候補化合物の探索プロセスでは、化合物の合成・目的物質の分取精製・活性を持つ化合物の評価と選別(ハイスループットスクリーニング)のループを円滑に回すことが重要となっている。このうち、合成とハイスループットスクリーニングについては自動化が進んでいるが、HPLCを用いた分取精製については、熟練した専門の技術者による条件の検討が必要であり、前後のプロセスに対してスピードが追い付いていない。
特に、大手の製薬メーカーの創薬化学部門では、1日あたり何百もの新規化合物を合成する能力を持っているが、合成と同じスピードで次のスクリーニング部門が要求する純度と量の化合物を分取精製することは困難だった。なぜなら、分取精製の可否判定や条件の決定には、クロマトグラフィに関する高度な知識を必要とするからである。そこで、これまで多くのラボでは分取精製専門の担当者を配置し、研究員のサポートを行っていた。しかし、この方法では、精製のスピードが合成のスピードに追いつくことは不可能である。このような分取精製のプロセスにおける問題を解決するために、今回、島津と武田薬品は共同で、新規合成化合物の分取精製の可否を判定し、精製条件を決定できる「ASAPrep」を開発したという。
同システムは、PDA検出器を接続した液体クロマトグラフ質量分析計(LC-PDA-MS)での測定結果から得られた目的化合物の保持時間(試料注入からピーク検出までの時間)を利用して、最適な分取条件となる移動相物質の濃度を計算し、分取の可否や条件を判定するアルゴリズムとなっている。同システムを使用するためには、新たに開発されたソフトウェア「Open Solution Purification」の導入が必要となる。同ソフトウェアに組み込まれたASAPrep演算式を用いることでアルゴリズムが算出される。
同システムにより、分取精製の可否判定が容易に行えるようになり、内径の小さい分析用カラムを用いた分取条件の検討から内径の大きい分取用カラムへのメソッド移管(スケールアップ)をスムーズに実現する他、これまでボトルネックになりがちだった分取精製業務の効率化や、ユーザーのクロマトグラフィ知識に左右されないワークフローの構築を可能にする。
なお、価格はソフトウェア「Open Solution Purification」を含めて80万円から(税抜き)。製薬メーカーをはじめ、新規化合物の合成や探索を行っている大学や研究機関などへも拡販を図っていくとしている。