東北大学は8月21日、ある特殊な条件の超音波に血管新生作用があることを発見し、この研究成果をもとに狭心症患者を対象とした超音波治療の治験を開始したと発表した。

今回の研究成果は東北大学大学院医学系研究科循環器内科分野の下川宏明 教授(東北大学病院臨床研究推進センター センター長)、同 大学院工学研究科の金井浩 教授、同 長谷川英之 准教授らと日立アロカメディカルの研究グループによるもので、米科学誌「PLOS ONE」に掲載された。

狭心症は心臓の筋肉に血液を送る冠動脈の異常によって引き起こされる心臓疾患。標準的な治療方法は生活習慣の改善を基本とし、薬物治療、カテーテル治療、冠動脈バイパス手術の3つがある。しかし、日本では人口の高齢化や食生活の変化にともない、これらの治療法では十分な効果が得られない重症例が増加しており、新たな治療法の開発が期待されている。

下川教授らは約15年前から血管新生を誘導する低出力体外衝撃波治療の開発・臨床応用を進めており、2010年に厚生労働省から先進医療として承認を得ていた。しかし、衝撃波は空気の層では膨張するため、空気で満たされた肺に当たらないように注意して操作する必要があるなどの問題があった。

そこで同研究グループは、40年以上前からエコー検査で使用され、安全性が確立されている超音波にも血管新生作用がないか調べたという。

実験ではまず、超音波をヒト由来の培養血管内皮細胞に様々な照射条件で当て、血管新生に最適な照射条件を特定。さらに、この照射条件の超音波を、虚血性心疾患モデル動物(ブタ)に照射したところ、毛細血管数が増加して、心筋の血流や収縮力が改善することが確認されたとのこと。また、この超音波治療の効果は前述の低出力衝撃波治療とほぼ同程度だった。

同研究チームは2013年度より重度の狭心症患者を対象に全国8カ所で治験を実施しており、患者への負担が少ないことや他の虚血性疾患への応用が期待されることなど、同治療法の有効性を示すことを目指している。

治療のイメージ図