東京地下鉄(東京メトロ)は8月19日、全線の運行情報や位置情報などをオープンデータとして公開し、同データを活用したアプリケーションの開発を競う「オープンデータ活用コンテスト」を9月12日より実施すると発表した。
同コンテストは、同社の創立10周年を祝う記念行事の一環として実施され、「もっとうれしい」をコンセプトに、「東京メトロを利用するお客様の生活が、より便利でより快適になるようなアプリ」の開発を競うもので、提出可能なアプリは、同社の提供する「東京メトロ全線の列車位置や遅延時間等のオープンデータ」を利用しているものとなる。
応募は、9月12日に開設予定の応募用特設Webサイトから可能で、個人やグループ、法人を問わず参加が可能。国籍や年齢、居住地等の制限もないが、未成年の方の応募には保護者か学校の先生などの監督者の許可が必要となる。また、ひとりが複数のアプリケーションを応募したり、複数のグループに所属することもできる。
応募の際に提出するものは、800字程度のアプリの説明と5枚以内の写真・スナップショット、最大再生時間5分のアプリ説明動画、マニュアル、各種ストアの公開URL、アプリ内で利用したデータで、アプリ自体は、応募時に各種アプリマーケットにて公開される。
既に公開しているアプリへオープンデータを活用し提出することも可能で、一部OSやブラウザに限りはあるものの、使用するデバイスの指定は行われていない。なお、提出するアプリは、新規・既存に限らず全てに「広告掲載やアプリ内課金の禁止」と「各種ストアで無料にて提供すること」が条件となる。
審査基準は、創造性や独創性、発展性、有益性といった「アイディア」部門と、実用性や操作性、安定性などの「完成度」部門、表現やデザイン技法という「デザイン」部門とされており、審査員は、同コンテストの関係会社などから5名が務める予定。1月以降に開催される表彰式にてコンテストの結果を発表し、グランプリ(1作品)には100万円、優秀賞(1作品)には50万円、goodコンセプト賞(2作品)には各15万円、10thメトロ賞(4作品)には各5万円が、記念品とともに贈呈される。アプリデータ提出および応募受付期間は、9月12日~11月17日だ。
同社は今回の取り組みで、既に公開している「列車時刻表や運賃表、駅間所要時間、各社の乗降人員数、女性専用車両、バリアフリー情報、駅出入口、車両ごとの最寄り出入口」といった情報のほか、「東京メトロ全線の進行方向や列車番号、列車種別、始発駅・行先駅、所属会社、列車位置、遅延時間」などを、国内の鉄道事業者として初めてオープンデータ化し1分ごとに更新していく。
同コンテストへの協力を行うYRPユビキタス・ネットワーキング研究所 所長の坂村健氏 |
東京メトロは、同コンテストの開催を、「オープンデータを、社内におけるサービス向上への動きを加速させる起爆剤」としたいほか、「オープンデータをインフラの1つとしてとらえ、外部にアプリの開発を委ねることで社内外でのイノベーションの誘発」と「2020年のオリンピック・パラリンピックを見据え、世界的なオープンデータの動きへの対応策の一環としてノウハウの取得」を図りたい考えだという。
同コンテストへの協力を行うYRPユビキタス・ネットワーキング研究所 所長の坂村健氏は、オープンデータへの海外での取り組みとして「フィンランドの国鉄」や「ロンドンオリンピック」での例をあげ、「オープンデータ化は、さまざまなサービスを低コスト・短期間で実現できるほか、よりユーザビリティの高いサービスが提供できる」とし、その注目度と可能性を強調した。
東京地下鉄の常務取締役 村尾公一氏 |
日本では、行政の取り組みとして、2013年6月に「世界最先端IT国家創造宣言」が閣議決定され、2015年末には、他国並みに公共データを公開することを目標に掲げ、オープンデータ化の推進が進められているという。
東京メトロの常務取締役である村尾公一氏は、「同コンテスト開催の成果やその後のデータの取扱など未確定な部分もあるが、イノベーションの機会として、10周年がチャンスとなると確信している」とし、同コンテストへの期待を覗かせた。