米Appleが9月にiPhoneの新製品を発表するようになって、期待感から毎年7月・8月にApple株が上昇するようになった。今年の夏も上昇カーブを描いているが、過去数年と違ってiPhoneの新製品以外にApple株を押し上げそうな8つの要素があると、Morgan StanleyのアナリストであるKaty Huberty氏が指摘している。

機関投資家(上位100位)のApple株の保有比率は現在2.3%。ピークだった2012年9月期(4.5%)を大きく下回っており、機関投資家が動く可能性がある (1)。今年度の110億ドルの配当、310億ドルの自社株買い戻しで、利回りが上がり(2)、発行済み株式数が減少しているのもApple株への関心を高めている。

大型企業買収となったBeatsの買収が話題になったが、それ以外にも2014年度の最初の3四半期だけで、Appleは2010年から2012年の2年間を上回る金額の買収を行って人材と技術を整えている(3)。リテール部門の責任者に元Burberry CEOのAngela Ahrendts氏が就任、Yves Saint LaurentのPaul Deneve氏がソーシャルプロジェクトを担当し、そしてBeatsのDr. DreとJimmy Iovine氏が加わるなど、Tim Cook CEOの戦略を遂行できる事業部門の責任者が揃った (4)。ウエアラブルは、ソフトウエアをAdobeのCTOだったKevin Lynch氏が担当しているという噂だ。

Appleは研究開発費も必要な分野やタイミングに集中させる。今年度はiPhoneやiPadが登場する前の時期に似た研究開発費の上昇が見られる(5)。これは新カテゴリの製品の登場を予想させるものだ。アナリストは例年通りにApple株のターゲットプライスを引き上げているが、今はまだiWatchが加味されたものではなく、今後のiWatch効果が期待できる(6)。

iWatchのような新カテゴリの製品は経営の不安材料にもなる。例えば、iPhone 5でフォームファクタを刷新した際に製造コストが上がり、供給不足も重なって粗利益率が落ち込み、投資家を不安にさせた。しかし、そのトラブルからAppleは利益幅に余裕をもたせるようになり、近年は粗利益率が安定している(7)。今年後半が製品の変わり目になっても、今のAppleはトラブルに陥りにくい。

CDだけではなく、デジタルダウンロードでも音楽の販売が減少しているが、Beatsの買収を通じて成長している音楽ストリーミングサービスを手に入れた。またApp Storeの売り上げの伸びが音楽ダウンロード販売の落ち込みを上回っており、デジタルサービスのシフトが円滑に進んでいる (8)。