花王は8月20日、自律神経の乱れと唾液成分の関連性に関する研究の中で、自律神経機能によって特定の唾液タンパク質が変動することと更年期症状の有無がこれらのタンパク質の濃度と関連していることがわかったと発表した。
この研究結果は、同社のパーソナルヘルスケア研究所・生物科学研究所・解析科学研究所によるもので、日本老年歯科医学会第25回学術大会(2014年6月13~14日)で発表された。
更年期やストレスなどを原因として自律神経機能の乱れが起こると、のぼせ・ほてり・疲労感・イライラなどの「不定愁訴」と呼ばれるさまざまな身体的な不調が現れることが知られている。
同社はこれまでに、口のネバつき・口臭・口の乾きなどの口腔の不調は身体的・精神的ストレス症状を自覚しやすい人ほど感じやすいことを明らかにしており、唾液腺も他の臓器同様に自律神経の支配下にあるので、自律神経の乱れにより唾液の量や成分などが変化すると考えられていた。
そこで今回の研究では、自律神経機能の乱れが比較的多いと考えられる更年期女性(45~55歳)50名を対象に、唾液性状と「不定愁訴」の関連性について調査を行った。
なお、自律神経は、身体や精神が緊張した時に活発となる交感神経と身体がゆったりとしている時に働く副交感神経の2つに支配され、自律神経失調症などで身体不調を感じる女性は交感神経の活動度が高い傾向にある。そこで、交感神経活動度を測定して自律神経機能を評価したという。
検出された1479種の唾液タンパク質成分量と交感神経活動度との相関分析を行ったところ、交感神経活動が活発になることにより減少する唾液タンパク質成分が3種類検出された。これらの成分は、いずれも抗菌や解毒作用などの健康維持に関わるはたらきが知られている成分だった。
さらに、その3種類のタンパク質成分と更年期に見られる自覚症状との関連性を解析した結果、「無気力で疲れやすい」「肩がこる」「眼が疲れる」などの自覚症状がある者はこれらの成分が低いことがわかった。
同社は、この結果について、「自律神経機能の乱れが、更年期症状など身体の不調のみならず、唾液機能の低下を介して口内環境にもさまざまな影響を与えることを示唆している。ストレスの多い現代社会においては、より健康な口内環境に整えるオーラルケアが必要」とコメントしている。