飲み会の帰りや突然の雨、タクシーを利用するシーンはさまざまだと思うが、「タクシー配車アプリ」を利用している人はどれほどいるだろうか。

流しのタクシーを捕まえるのも良いが、ある程度時間が読めるように、アプリで指定の場所に呼ぶことができるため、国内外の事業者が多くのアプリを提供している。中には、クレジットカード登録や、携帯キャリアによる決済にも対応しているアプリもあり、「財布を落とした」という状況でもタクシーに乗車できるようになる利便性も兼ね備えている。その中でも注目なのが「Uber」だ。

米国発のハイヤーの配車・決済アプリである「Uber」が日本に上陸してから5カ月強。同社は、配車アプリのリーディングカンパニーとして、世界42カ国、158都市でサービスを展開しているが、ことさら日本では利用者の伸び率型の都市と比較してめざましいものがあるという。

そんなUberが8月5日の「タクシーの日」に開始したのが「uberTAXI」だ。配車料金を抑えつつ、より多くのユーザーにUberを利用してもらえるように展開するもので、アジアでは初めてのサービスインとなる。

これまでのUberはハイヤーしか提供されておらず、展開している車の数も少なかったため、金曜日の夜などはアプリを起動してもほとんど捕まることがなかった。しかし、より台数の多いタクシーについても提供することで、ユーザーの選択肢の幅が拡がるだけでなく、Uberとしての車の確保数、供給量も増強されることになる。

また、同時に発表されたのが「uberTAXILUX」だ。こちらは、「プレミアムタクシー」と呼ばれるもので、ハイヤーのようにコンシェルジュサービスとまではいかないものの、トヨタクラウンロイヤルサルーンやLexus LSといったハイグレードな車種を用意することで、高い満足感を利用者に提供しようという試みだという。Uberの中でも、他国に先駆けて世界初のサービスインとしている。

こうして、ハイヤー配車の「Uber」、プレミアムタクシー配車の「uberTAXILUX」、タクシー配車の「uberTAXI」と三段構えでサービスを提供することになるUberだが、アプリはこれまで通り1つのアプリで配車できる。車種を指定するだけでいいので、これらのグレード分けを特別に気にする必要はないと言える。

ただし、問題点があるとすると、配車が東京都心の一部に限られることだろう。IT業界とアナログを掛け合わせたサービスは多く登場しているが、地域性があるこうしたサービスで、全国の都市に展開していないのは、サービスの認知度向上や利便性から考えても少しもったいないと言える。この点について、Uber Japan 執行役員社長の高橋 正巳氏は「今はUber Japanとして社員数も少なく、東京都内でのサービス確立を優先している。体制が整えばほかの都市にも展開したい」と話していた。

全国タクシー配車

一方で、全国津々浦々を網羅する「全国タクシー配車」というアプリも存在する。47都道府県、117グループと連携する全国タクシー配車は、合計運用台数が2万1151台にのぼり、運用台数の公表に至っていないUberとは異なり、規模感で勝負している。もちろん、全国で2万台であるため、地域間のばらつきなどは否めないことだろう。

しかし、全国どこでも1つのアプリでタクシーを呼べるメリットは大きく、グローバル展開で外国人観光客への対応力も魅力のUberとは異なり、「日本に住む人にとって、どこでも呼べる安心感」はこちらのアプリの方が上かもしれない。ネット決済機能にも対応しているため、支払いもスムーズだ。

スマホdeタッくん

全国展開はしていないものの、東京23区や武蔵野市、三鷹市で利用できる「スマホdeタッくん」は、配車可能台数が1万台弱と、都内の法人タクシーのほぼ半数をカバーする。

首都圏在住者であれば見たことがある「日本交通」や「共同無線タクシー」「大和自動車交通」「グリーンキャブ」「チェッカーキャブ」「日の丸交通」といった大規模事業者が利用できるため、サービス品質という点でも安心できることだろう。

また、「スマホdeタッくん」は、Microsoft Azureをバックエンドのインフラに採用しており、一般的にアプリが提供されているiPhoneとAndroidに加えてWindows 8アプリも存在する。つまり、タブレットやPCからも手軽に配車ができるわけだ。

ヘイロー

最後に紹介するサービスは「HAILO(ヘイロー)」だ。冒頭に紹介したUberと同様に、海外発(ロンドン)のベンチャー企業で、現在大阪でサービスを展開している。

Uberがクレジットカード決済に限られるのに対して、ヘイローは現金支払いも可能となっており、ユーザーは手数料がかからない。

反対に、運転手側に少額の手数料が発生するものの、こちらも初期費用や月額固定費用がかからず、個人タクシーと利用者を繋ぐ「かけ橋」としての役割を担っている。

また、ヘイローは「AED搭載タクシーをスマホで呼び出し - ヘイローら4者が大阪で実証実験」といった取り組みも行なっており、地域に根付くサービスとして裾野を広げようとしている。

タクシー会社が提供するアプリも多く登場

こうした複数のタクシー会社を束ねて配車可能にするアグリゲーションアプリ以外にも、タクシー会社自身が提供するアプリも多く存在する。

ゲームアプリもまぎれているが、東京無線や日本交通といった大規模事業者のアプリが上位に並ぶ

何度も利用してくれる「ファン」を作ることが、電話による配車サービスだけだった時代よりもビジュアル面でわかりやすく、容易になったという点も大きいのだろう。

さらなるベンチャー企業の参入なども考えられる中で、競争激化は、利用者に価格や、サービス面でも大きなメリットが生まれる。日本のタクシーは、安全安心というイメージもある中で、更なるサービス向上がIT利活用で進む。このような取り組みが、観光立国を標榜する日本を下支えしてくれるのかもしれない。