日々さまざまなモノゴトを生み出しているクリエイターたちですが、創作活動には使い慣れた道具と、それを運ぶためのかばんが欠かせません。本連載では、クリエイター御用達のかばん、そして「これがなくては仕事にならない」と思う3つのアイテムをヒアリングし、紹介していきます。

今回は、メディアを問わずデザインを手がける企業で雑誌、書籍、広報ツールといった紙媒体のデザインを担当しているエディトリアル/グラフィック・デザイナーのSさん(26)に、かばん"と"中身を見せてもらいました。

ガジェットを水から守る個性的なフォルムのバックパック

「Cote&Ciel」の「The Twin Touch Rucksack」

パリで生まれたiPhone/iPad/iPod/MacBook向けアクセサリーブランド「Cote&Ciel」のバックパック「The Twin Touch Rucksack」を常用しているSさん。同ブランドのバックパックの定番モデルとしては、メッセンジャーバッグを縦に背負っているようなルックスの「B'2nd」がよく知られていますが、それとはやや形が異なります。開口部がコンパクトにまとまっている分、定番モデルと比較して丸く柔らかい印象を受けるモデルです。

同モデルならではの長所は、素材のメモリーテックファブリックと耐水性のあるECOYAフレームが、中にしまったデジタルガジェットを守ってくれるところ。業務上、Macbook Proやデジタル一眼レフなどを持ち歩くことの多いSさんにとって、このかばんは頼れる相棒だといえそうです。

"握り心地"で選ぶ筆記用具

Sさんの筆箱とその中身。筆箱も学生時代から使っているロール式のもの

学生時代より愛用している文房具も、紙媒体のデザイン業務には欠かせません。 SさんはSTAEDTLER(ステッドラー)の筆記具を愛用していますが、その理由は同ブランドの特徴である、金属に細かい凹凸を施した「ローレット」加工のグリップ部分が使いやすいからだといいます。

気分によって用いる筆記具はまちまちということですが、ページレイアウトのラフを起こす時は、芯ホルダーの優しいラインで描くことが多いそう。また、パイロット製のスタンダードな赤と青のサインペンは、レイアウトの修正指示や色校での印刷所への指示など、業務のさまざまな場面で重宝しているとのこと。

"手頃でいい音楽"を聴くために選んだヘッドフォン

「SENNHEISER(ゼンハイザー) HD 25-1 II」

読書とは別に音楽鑑賞が好きで、「それほど高いお金をかけずに、良い環境で音楽が聴きたい」との考えから、Sさんが導入しているのが「SENNHEISER(ゼンハイザー) HD 25-1 II」。この製品を選んだ理由は、価格に対して音の解像感が高く、非常にシャープな音が聴けるからだといいます。

特に、低音がぼやけずにバキバキ鳴るところが気にいっているそう。ルックスも音もドライな印象で、それが良い点だとも語っていました。このヘッドホンでグリッチやテクノを聴くと、無心で作業できるそうです。

愛読書を使って空き時間に英語学習

左から、「Speculative Everything」、「Harmony」、「ハーモニー」

紙媒体のデザインがメインの業務で、個人的な趣味も「読書」のSさん。日々さまざまな「紙もの」に触れている中で、取材した時期にかばんに入っていたのは「Harmony」、「ハーモニー」、「Speculative Everything」の3冊でした。

「Speculative Everything」は、「スペキュラティヴ(思弁的)・デザイン」と呼ばれるデザイン概念を解説した書籍。UX(ユーザー・エクスペリエンス)デザイン、インタラクション・デザインなど、デザイン業界は横文字だらけの世界ですが、このスペキュラティヴ・デザインは、簡単にいえばあるべき未来を"問う"デザイン。問題解決型のデザインは世に多くあり、知名度も存在感も高まる一方、「なにが問題か」を世に問うための手法であるはそれほど知名度が高くないため、日本語の文献はほとんどなく、慣れない英語と格闘しているとのこと。

「ハーモニー」と「Harmony」は、Sさんが「穴が開くほど読んだ」というSF作家・伊藤計劃の作品「ハーモニー」の原著ならびに英語版。上述のように、仕事で英語の文献を調べなくてはならない場面が多いため、リーディングだけでも素早くできるようになりたいと考え、手始めに大好きな小説を英語訳で読みはじめたのだとか。原著と英語訳を比較して、登場人物の言いまわしや描写の違いを楽しんで読み進めているそうです。