群衆(crowd)と業務委託(sourcing)からの造語となる「クラウドソーシング」。おもにインターネットを通じて、企業が個々の仕事をスキルを持ち合わせた個人に依頼する形態を指し、仕事を依頼する企業と依頼を受けるオンラインワーカーを結びつけるプラットフォームとしてElanceやoDeskなどが知られている。国内においては、ランサーズが運営する「Lancers」、クラウドワークスの「CrowdWorks」、ヤフーの「Yahoo!クラウドソーシング」などがある。
このうち国内大手のクラウドソーシングプラット―フォーム「Lancers」を運営するランサーズは8月12日、都内で新規事業の説明を行った。プラットフォームをオープン化し、同社の抱える36万人を超える会員データベースを外部パートナーに公開する「Lancers Open Platform」を発表。パートナー企業はLancersのオンラインワーカーを活用したサービス提供が可能となり、これによってクラウドソーシング市場の拡大を狙う。
7月に公開された矢野経済研究所の調査によると、国内のクラウドソーシング市場規模は2013年が前年度比101.7%増の215億円。2014年は408億円と予測。大手企業などのクラウドソーシングサービスの利用が進むことから引き続き高い伸びが続き、2018年には1820億円規模への成長を見込んでいる。
これに対し、Lancersの流通金額は最新の四半期(4月-6月期)で49億円。このうち、実際に業務発注が行われ成約となったのは4億5000万円だという。クライアント数も9万を超え、右肩上がりの伸びを維持している同社だが、この数字にひとつの課題があらわれている。依頼に対して成約割合が少ないことだ。この背景には依頼するクライアントにとって依頼の要件定義やディレクションが壁となっているのではないかというのが同社の見方で、この課題を解決するのが今回のプラットフォームのオープン化となる。
8月12日の時点では、コンテンツライティングや翻訳、動画制作などの分野でパートナー企業14社と提携。年内にはさらにパートナー企業との提携を進めていく予定。クライアントは、これらパートナー企業に依頼することで、要件定義やディレクションといった負荷が軽減されることになる。また、パートナー企業にとっても自社で人員を抱えるのではなく、Lancersのオンラインワーカを活用することで流動的な人材確保が可能となる。またデータベースが公開されることで、ワーカーのスキルセットやレーティングなどの情報でフィルタすることで能力をもった人材の確保にも役立つことになる。
ランサーズ 代表取締役 CEO |
ランサーズ 代表取締役 CEOである秋好 陽介氏は同社の直近の数字として「月の成約金額は2億円を超えており、今年度には30億円を超える見込み」とした。また、月になんらかの報酬を得ているオンラインワーカが1万人ほどおり、このうちの数百人はLancersで生計を立てているという。このクラウドソーシングの仕組みを広げていきたいとする秋好氏は中長期の目標として「2020年までに1000万人の人が働くプラットフォームを目指す」とする。
「時間と場所にとらわれない 新しい働き方をつくる」をビジョンに掲げるランサーズ。今回のオープン化は、クライアントにとってはより依頼の敷居を下げ、専門性をもったパートナー企業にとっては柔軟な人材確保など経営資源の効率化を提供することで、市場の活性化を加速させる試みとなる。