東北大学は8月7日、GaNを主材料とする窒化物半導体からなる青色LED、およびBlu-ray用レーザの高性能化に向けて、格子不整が従来のサファイア基板と比較して1/10となる新たな結晶基板ScAlMgO4(SCAM)を開発し、その適用性を確認したと発表した。
同成果は、同大 金属材料研究所の松岡隆志教授、福田結晶技術研究所らによるもの。
福田結晶技術研究所は、回転引き上げ法(Cz法)によるサファイア結晶引き上げ技術をベースにSCAM結晶の成長条件を検討し、直径2インチの高品質結晶の作成に成功した。結晶品質は、劈開加工したC面をX線回析で評価した結果、半値幅が12.9秒で、Siの完全結晶に匹敵したという。開発のポイントは、Sc2O3-Al2O3-MgO3成分系からの結晶成長条件と炉内温度分布測定による最適炉構造の構築だったとしている。また、SCAMはウェハ加工において、サファイアなどと異なり、インゴットから切断や研磨をせずに、劈開加工でエピレディウェハにすることが可能。これにより、ウェハ加工コストを削減できるという。
さらに、東北大学 金属材料研究所は、GaN結晶の薄膜成長に用いられる有機金属気相成長(MOVPE)装置を用いて、SCAM結晶劈開面に1040℃の高温でGaN薄膜を成長させた結果、鏡面で低転位結晶ができることを確認した。そして、SCAM基板上にLED構造を成長させて試作し、SCAMがGaNによる高輝度LEDやLD用基板として、優れた特性を有していることを確認したとしている。
今後、研究グループでは、SCAMの直径4インチから6インチへの大口径化、GaN自立基板の開発を進めていく。また、福田結晶技術研究所は、来春をめどに国内メーカーと共同で、直径2インチ結晶ウェハの販売を開始する予定とコメントしている。