京都大学は8月6日、こころの未来研究センターの阿部修士特定准教授らの研究グループが、機能的磁気共鳴画像法(functional magnetic resonance imaging;:fMRI)と呼ばれる脳活動を間接的に測定する方法と嘘をつく割合を測定する心理学的な課題を用いて、正直さ・不正直さの個人差に関係する脳の仕組みを解明したと発表した。
今回、実験参加者に対し、fMRIによる脳活動の撮像中に、「金銭報酬遅延課題」「コイントス課題」の2種類の課題に取り組んでもらった。
「金銭報酬遅延課題」は、報酬(今回の研究ではお金)を期待する際の脳活動を調べるための課題で、正方形が一瞬呈示され、その間にうまくボタンを押すことができれば、報酬を獲得することができる。
コイントス課題は、正直さ・不正直さを測定するための課題で、実験参加者は、コイントスの結果(コインが表か裏か)を予想する。予想に成功すると、お金による報酬が与えられるが、失敗するとお金が減る。
実験を実施した結果、金銭報酬遅延課題で測定した、報酬を期待する際の「側坐核」の活動が高い人ほど、コイントス課題において嘘をつく割合が高いことがわかった。これより、脳のレベルでの報酬への反応性が高い人ほど、お金への欲求が強く、結果として嘘をついてしまった可能性があるという。
さらに、金銭報酬遅延課題で測定した側坐核の活動が高い人ほど、コイントス課題で嘘をつかずに正直な振る舞いをする際に、背外側前頭前野と呼ばれる領域の活動が高いこともわかった。
背外側前頭前野は、理性的な判断や行動の制御に重要な領域と考えられている。お金への誘惑に打ち勝って正直に振る舞うためには、報酬への反応性が高い人ほど、より強い前頭前野による制御が必要という可能性を示唆しているという。
これより、今回の研究は、報酬への脳のレベルでの反応、つまり側坐核の活動の個人差によって、人間の正直さ・不正直さがある程度決まることを示した世界的にも初の知見としている。
今回の研究成果は、米国科学雑誌「Journal of Neuroscience」誌の電子版で公開される。