企業でビジネスを展開するにあたり、社内のコミュニケーションは必要不可欠な存在といえる。その方法は対面や電話での直接的な会話だけでなく、電子メールやグループウェア、社内SNSなど各種ICTツールの普及によって多様化してきた。

そこで今回マイナビニュースでは、全国のビジネスパーソン439名を対象に「社内コミュニケーションの状況・課題」をテーマとしたアンケートを実施。社内におけるコミュニケーションのボトルネックはどこに潜んでいるのか、ICTツールの導入率に加えてそれらは実際に活用されているのかを、アンケート結果とグループウェアメーカーのインタビューから探っていきたい。

コミュニケーションに危機意識を感じながらもボトルネックの所在が不明

アンケートについては、10人未満の小規模企業から5,000人を超える大規模企業まで幅広い読者からの回答を得ることができた。役職に関しては、一般社員・職員クラスの割合が最も多くなっている。

アンケート回答者の勤務先での役職

アンケート回答者の会社規模(従業員数)

まずは「勤務する会社におけるコミュニケーションの課題レベル」を聞いたところ、全体では「大いに感じる」(19%)と「やや感じる」(33%)を合わせて52%ものユーザーが、自社のコミュニケーションに何らかの危機意識を抱いていることが分かった。これを回答者の属性ごとに細分化すると、また新たな切り口が見えてくる。

「あなたが勤務する会社の中で、社内コミュニケーションについて課題があると感じる事がありますか?」

「課長クラス」「係長・主任クラス」「一般社員・職員クラス」など現場寄りの立場にいる回答者は、全体と同じように過半数以上が社内コミュニケーションに危機意識を持っていることが分かる。しかし「経営者・役員クラス」や「部長クラス/事業部長/工場長クラス」では、「あまり感じない」「まったく感じない」が8割近くを占める結果になった。また「契約・嘱託・派遣」や「パート・アルバイト」については、現場寄りであっても社員と比べて帰属意識が低いためか、その中間の意見が多くなっている。

「経営者・役員クラス」

「部長クラス/事業部長/工場長クラス」

「課長クラス」

「係長・主任クラス」

「一般社員・職員クラス」

「契約・嘱託・派遣」

それでは、危機意識が高い現場寄りの回答者が、問題点として感じているのはどのような部分なのだろうか? 同じ部署内の同僚間、部下から上司、上司から部下、部署を超えた社員間、経営者層と一般社員、同じテーマや課題に取り組んでいる社員間、という6種類のシチュエーションでコミュニケーションに課題を感じるか聞いたところ、2つの注目ポイントが明らかになった。

1つめは、前述の通り全体で52%ものユーザーが危機意識を持っていたのに対し、シチュエーション別の質問では「大いに感じる」と「やや感じる」を合わせても30%前後にとどまっていることだ。この結果から、普段の業務で危機意識を感じてはいるものの、具体的なボトルネックの所在までは把握できていないといった状況が予測される。

アンケートのフリーコメントには、「社内でコミュニケーションをするという文化がない」という意見もあり、問題の解決には、まず、それぞれの部署で上司部下間、チーム間、部署間で社員がどんな問題を抱えているのかを洗い出してみることが必要かもしれない。

2つめは、上司と部下が抱いている課題意識に大きな乖離が生じている点だ。「同じ部署内の上司とのコミュニケーションに課題を感じますか?」という問いには28%が危機意識を持っていると回答したが、一方で役職者に対する「同じ部署内の部下とのコミュニケーションに課題を感じますか?」という質問では、危機意識を感じているのは17.6%に過ぎない。

これらの結果から、現場で業務を行うスタッフと上層部および、末端の一般社員へ情報を伝達する上司・部下間について、コミュニケーション意識のギャップが生じていることがわかる。こうしたギャップは、上層部の意思決定を現場へ伝達し、スタッフが迅速に業務を遂行する上で大きな阻害要因になるはずだ。

同じ部署内の同僚同士のコミュニケーションに課題を感じますか?

同じ部署内の上司とのコミュニケーションに課題を感じますか?

同じ部署内の部下とのコミュニケーションに課題を感じますか?(役職者のみ回答対象)

部署を超えた社員同士のコミュニケーションに課題を感じますか?

経営層と一般社員とのコミュニケーションに課題を感じますか?

「同じテーマや課題に取り組んでいる社員同士のコミュニケーションに課題を感じますか?

そのため昨今では、こうした社内コミュニケーションに関する課題を解消するべく、各社からICTを活用したさまざまなコミュニケーションツールが提供されている。そこで次に、各種コミュニケーションツールへの期待に関する調査結果を見ていくことにする。

ここでは「課題を解決するために使ってみたいツール」について、以下の8つから複数選択式で回答してもらった。

電子メール 社内外とのやり取りで最も一般的に使われている定番ツール。
グループウェア 社内の情報共有に特化したツール。社内掲示板/スケジューラー/社内ポータルなども含む。
社内ブログ 双方向のやり取りよりも、情報発信をメインとしたツール。
社内SNS 社内向けのクローズド環境で使えるSNS。一般的なSNSと比べて部外者とのやり取りが気にならない。
Facebook ビジネス用途で使われることも多いSNS。「いいね!」や「シェア」、コメントなどでの交流も可能。
Twitter 好きな時に好きなことを140文字以内で"つぶやく"スタイルのツール。
LINE iOS/Android/PC向けの無料通話・メールアプリ。電子メールよりも手軽に、チャット感覚で利用できる。
Web会議/テレビ会議システム 遠隔地と会議を行う際に有効。専用ハードウェアを使うものからクラウドサービスまでさまざま。

社内コミュニケーションの課題を解決するために使ってみたいツール(複数回答)

電子メールについてはすでにコミュニケーションツールとして定着しており、活用意向も39.0%と非常に高い。導入企業が年々増えているグループウェアに関しても35.8%と、電子メールに引けを取らない水準の高さだ。以降「社内SNS」(21.4%)、「LINE」(16.9%)と続くが、同じソーシャル系の「Twitter」と「Facebook」はやや低めとなった。これは、あまりオープンすぎないツールの方が社内コミュニケーションとして使いやすい、といった印象の表れともいえるだろう。

いずれにしても、すでに定着していると考えられる「メール」と「グループウェア」が期待されるツールとしては大きい傾向が見られる。