世界最大最強の直径30m巨大光学望遠鏡「TMT」が今年10月から、ハワイのマウナケア山頂(標高4205m)付近に建設されることになった。2021年度の完成を目指す。国立天文台が7月29日発表した。日本、米国、中国、カナダ、インドが共同で建設する。5カ国の天文台や大学などの間で役割分担の合意が得られ、協定書が4月に署名され、5月には法人としてTMT国際天文台が米国で設立された。ハワイ州が7月25日に建設を許可し、着工の条件が整った。
マウナケア山頂には、国立天文台の直径8mのすばる望遠鏡など各国の大型望遠鏡が10台余り立ち並ぶ。TMTは「30m望遠鏡」の英語の頭文字からとったもので、すばる望遠鏡の数十倍の性能がある。直径30mの主鏡は492枚の分割鏡をつなぎ合わせて構成する。その分割鏡(交換用を含めると574枚)の鏡材はすべて日本が製作する。今年3月までに60枚ができ上がり、鏡面の研削、研磨加工の量産に入っている。望遠鏡の巨大な本体も日本が担当する。基本設計を終えており、詳細設計を経て製造する。
建設費も含むTMTの開発費は約1500億円で、日本は4分の1を負担する予定。欧州も南半球の南米チリ高地に直径39mの巨大望遠鏡を計画しているが、TMTの建設がかなり先行している。次世代の巨大光学望遠鏡の時代は北半球のTMTが切り開くことになる。TMTは、大気の揺らぎを補正する最新の補償光学も活用し、宇宙からの微弱な光を捉える。マウナケア山頂近くの予定地までの道路建設などが夏以降に始まり、10月に現地で起工式を開く。
TMT国際天文台の評議員会副議長の家正則(いえ まさのり)国立天文台教授は「すばる望遠鏡は129億光年も離れた遠方の銀河をたくさん見つけたが、見つけるのがせいぜいだった。TMTなら、その分析までできて、宇宙の始まりがより見えてくる。集光力が大きいので、太陽系外の地球に似た惑星に酸素があって生命が存在しうるかどうか、なども調べることができる。天文学を飛躍させる画期的な光学望遠鏡になるだろう」と話している。