エボラブル アジアは7月28日、オフショア開発の拠点を街レベルで構築する施策「Evolable Asia Town構想」を発表した。5年後に1万人のエンジニア雇用を目指して、Wi-Fiやセミナールーム、さらには飲食店、ジム、サッカーコートなどを備えた街区を構築するという。

Evolable Asia Townの模型

雇用促進と離職率低下を目指して! Evolable Asia Town構想

エボラブル アジアは、ベトナムで請け負うオフショア開発事業を手掛ける企業。「ラボ型オフショア開発」というスタイルを提案しており、一般的なオフショア開発のようにプロジェクト単位で契約するのではなく、企業専属の開発部隊を組織するようなイメージで必要なスキルのエンジニアを必要な数だけ現地で雇ってもらう形態をとっている。

エボラブル アジア 代表取締役社長 吉村英毅氏

専属のチームであるうえ、メンバーの最終面接もクライアントが実施するため、細かい指揮系統をクライアントが掌握可能。従来のオフショア開発のように「納品されるまで何が起こるかわからない」といった状況を回避できるといった特徴がある。

また、直接雇用する場合と比べると、オフィス開設や採用活動など現地で必要になるコストを削減できるうえ、現地エンジニアにおけるエボラブル アジアの認知度が高いことから、優秀なエンジニアを採用しやすいという利点もあるという。

今回発表されたEvolable Asia Town構想は、現地採用活動をさらに活発化させると同時に、ベトナムの一般企業において年平均20%と言われる離職率を低下させることが主な狙い。「エボラブル アジアの離職率は7-8%」(エボラブル アジア 代表取締役社長 吉村英毅氏)だが、就業環境を欧米並みに充実させることでその数字をさらに改善できると見込んでいる。

エボラブル アジアでは、現在拠点を構えるホーチミン1区に加え、隣接する2区に2018年までにオフィスビルを構築する計画。現在400人程度のエンジニアを、3年後に5000人、5年後に1万人にまで拡張する予定という。

「現在の日本のシステム開発におけるオフショア開発の割合は約1%であるのに対して、欧米は約10%。そう考えると、日本もこれから10%程度にまで拡大してく可能性が高い。日本の開発市場は約10兆円なので、1兆円程度までオフショア市場が伸びると考えられる。また、現在最もシェアの高い中国は、人件費の高騰やカントリーリスクといった問題を抱えており、ベトナムへの移行が進んでいる。ニーズが急激に高まっているので、対応できる環境を整えていきたい」(吉村氏)

VietnamWorksが全面協力、エンジニア向け日本語習熟度試験も開始

Evolable Asia Town構想と併せて同社は、ベトナムでの人材確保に関してエン・ジャパンの子会社VietnamWorksから全面協力を得たことも発表した。

エボラブル アジアの薛 悠司氏

VietnamWorksは、昨年4月にエン・ジャパンが買収した求人媒体。ベトナムで市場シェア7割を獲得している。

今回の発表により、エボラブル アジアと共同で日本語人材専門採用サイトを立ち上げるほか、採用イベントを共催したり、「JLIT(Japan Language IT Test)」と呼ばれる日本向けブリッジSEの能力を問う無料の資格試験も開始したりする。テストは年2回実施予定で、1~3級の3種類を用意。初回は10月5、6日に開催し、400人の受験を目標としている。

エボラブル アジアの薛 悠司氏は、「日本向けの開発を成功させるうえでは、言語が大きなポイントの一つ。ベトナムでは日本語教育が活発で、今年から全国3000の高校で日本語教育が開始したうえ、大学の日本語学科も増えている。試験は当初、エボラブル アジア内での受験を意識したものになるが、ゆくゆくは日本語学校にも提供して、日本語人材の教育に役立てられれば」と語り、ベトナム全体を巻き込んだ大きな展開も視野に入れていることを示唆した。

左から吉村氏、エン・ジャパン 代表取締役社長 鈴木孝二氏、薛氏