理化学研究所(理研)は7月25日、超伝導回路を用いたパラメトロンを作製し、量子ビットの読み出しに応用したところ、90%を超える精度での単一試行読み出しに成功したと発表した。

同成果は、理研 創発物性科学研究センター 巨視的量子コヒーレンス研究チームの蔡兆申チームリーダー、および日本電気、東京大学、東京医科歯科大学、米マサチューセッツ工科大学の研究グループらによるもの。詳細は、英国のオンライン科学雑誌「Nature Communications」に掲載された。

パラメトロンは、1950年代に東京大学で開発された計算機の演算素子である。フェライトコイルから形成されたパラメトロンを用いた計算機はパラメトロン計算機と呼ばれ、日本で商用化された。その後、トランジスタの普及に伴い、パラメトロン計算機は衰退した。しかし近年、トラップ中の冷却原子や微小機械振動子など、さまざまな物理系でパラメトロンが実現され、基礎物理だけでなく、新たな計算機への応用の観点からも再び注目を集めている。

研究グループは、磁束計に用いる超伝導磁束量子干渉計(SQUID)を超伝導共振器の回路に組み込んでパラメトロンを作製した。単一のパラメトロンは、位相検波器としての機能を持つが、研究グループはこのパラメトロンを用いて1フェムトW(10-15W)という微弱なデジタル変調シグナルを0.02%という低いビットエラーレート(符号誤り率)で復調できることを示した。この検波機能を超伝導量子ビットの読み出しに応用したところ、90%を超える高い精度で、高速かつ非破壊の単一試行読み出しを実現した。これは、量子計算機の実現に必須な技術である量子計算のエラー訂正に応用が可能な成果であるとコメントしている。

今回の研究で用いたパラメトロンデバイスのチップ写真