10Gイーサネット対応のスイッチの価格が手頃になり、"10G環境"の導入は規模を問わず、さまざまなネットワークにおいて現実的な選択肢になりつつある。そうした背景を踏まえて、本企画では、規模別の10G環境の構築例を紹介している。
今回は、大規模ネットワークにおいて、NETGEAR社の10Gイーサネット対応のスイッチを利用した具体的な構成案を考える。
規模別構成例で学ぶ、10Gスイッチの選び方 記事目次
・小規模ネットワーク編
・中規模ネットワーク編
・大規模ネットワーク編(本記事)
サーバの仮想化環境をより柔軟に構成するためには、ストレージのネットワーク化もポイントだ。今回はNETGEAR社の10Gイーサネットスイッチを利用したIP-SANの構成例を考えたい。
ネットワーク要件
物理サーバ上に仮想サーバを作成する際、CPUやメモリに加えてストレージの割り当ても行う必要がある。物理サーバのローカルストレージを仮想サーバに割り当てるようにすると、仮想サーバへのストレージの割り当てに制約が出てくる可能性がある。
たとえば、仮想サーバを新しく追加しようとしても、物理サーバのローカルストレージ容量が足りず、仮想サーバに十分なストレージ容量の割り当てができなくなってしまうことが考えられる。
したがって、仮想サーバを柔軟に構成するためには、SAN(Storage Area Network)によりストレージをネットワーク化するのがよいだろう。ストレージを集約してSANに接続することにより、柔軟なストレージ容量の割り当てやストレージ容量の拡張が可能になる。
※予算が潤沢にあれば、ストレージ仮想化ソフトの導入が考えられるが、ここではすでに一般化した技術を使うことにしよう。
SANの構成例として、想定する要件は以下のとおりだ。
・iSCSIによるIP-SANの構築
・必要なストレージ容量は最大40Tバイト
・5台の物理サーバをデータLANおよびSANに接続(ネットワークインタフェース:10G SFP+ )
物理サーバのデータLANおよびSANへの接続は、通信速度だけではなく信頼性も重要になる。
ネットワーク構成例
上記の要件に基づいたIP-SANの構成例が次の図だ。ポイントは「データLANおよびSANへの高速かつ冗長化された接続」だ。
表1 ネットワーク構成機器
機器名 | 台数 | 単価(税別) | 金額(税別) | 備考 |
---|---|---|---|---|
L2+スタッカブル・マネージスイッチ M7300-24XF | 4 | 159万8,000円 | 639万2,000円 | 24ポート 10G SFP+、4ポート10GBASE-T(コンボポート) |
ReadyNAS 4220X | 1 | 280万円 | 280万円 | 2ポート10GBASE-T、4Tバイト HDD 12台 |
*上記単価および金額は定価ベースで、市場価格はさらに安い価格で取引されている。
ネットワークの特徴
iSCSIによるIP-SANを構築するには、物理サーバとストレージデバイス間でイーサネット-TCP/IPの通信ができればよい。そのため、iSCSIによるIP-SANはFC-SANやFCoEに比べて手軽に、かつ安価にSANを構築できる。FC-SANやFCoEは、専用のインタフェースや機器が必要となり構築のコストも手間もかかってしまうからだ。
ただし、物理サーバとストレージデバイスを単純にイーサネットで接続してTCP/IPで通信できるようにするだけでは、実用的なIP-SANの構築は難しい。物理サーバとストレージデバイス間を高速に接続し、かつ、冗長性も確保することが重要だ。
そこで、この構成例ではIP-SANを構築するために2台のM7300-24XFをスタック構成として冗長性を確保している。M7300-24XFでは、専用のスタック用インタフェースではなく、通常の10G SFP+または10GBASE-Tのインタフェースを利用して柔軟にスタックを構成できるという特徴がある。
そして、物理サーバの10G SFP+インタフェースをスタック構成としているそれぞれのM7300-24XFスイッチへ接続している。このような接続構成を取ると、2本の10Gリンクをリンクアグリゲーションで集約することが可能だ。すなわち、物理サーバとIP-SANの接続は高速かつ冗長化されることになる。
ストレージデバイスであるReadyNAS 4220Xの接続でも同様のことが言える。物理サーバおよびストレージデバイスは高速かつ冗長化されたIP-SANへの接続を実現している。そして、同様に考えて物理サーバのデータLANの接続も高速かつ冗長化している。
また、ストレージデバイスとして利用するReadyNAS 4220Xには、4TバイトのHDDを12台搭載する。万が一のディスク障害に備えて、12台の4TバイトHDDでRAID6を構成する。これにより、最大40Tバイトのストレージ容量を確保しつつ、2台までのディスク障害に対応できるようになる。
まとめ
これまで3回にわたって10Gイーサネットの具体的な構成例を考えてきた。10Gイーサネットは、
・アクセスが集中するNASの接続
・仮想サーバをホストする物理サーバの接続
・IP-SANの構築
など、さまざまな状況で広がっていくだろう。
コストパフォーマンスに優れた10Gイーサネット環境を構築するために、NETGEAR社は3回の構成例で挙げた機器をはじめとして、多くの製品ラインナップを提供している。
10Gイーサネット環境を構築する際には、NETGEAR製品の導入を検討してみてはいかがだろうか。