レッドハットは7月23日、「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 5」(以下、RHEL-OSP 5)の提供を開始したと発表した。RHEL-OSP 5は、同社が提供する3代目のOpenStackディストリビューション。ホストOSに今年7月リリースのRHEL7を採用し、その上に今年4月にリリースされたOpenStackの新版(コードネームIcehouse)を取り込むかたちで、IaaSに求められる最新の機能群を実現している。

発表会に登壇したレッドハット クラウド・仮想化製品事業部の土居昌博氏は、従来型インフラとOpenStackで実現されるクラウド型インフラの違いについて、以下のような表を用いて説明。

従来型とクラウド型インフラの違い

レッドハット クラウド・仮想化製品事業部の土居昌博氏

従来型は、1つのステートフルな仮想マシンでアプリケーションを動作させ、拡張の際にはスケールアップで対応するのに対し、クラウド型は複数のステートレスな仮想マシンでアプリケーションを動作させ、スケールアウトで拡張に対応することを解説した。

そのうえで、従来型インフラの課題として、「拡張が容易でないために、昨今のトレンドとなっている膨大なデータ/サービスリクエストに対応できない。また、耐障害性・可用性を高めるために高価なツールが必要」と分析。今後のシステムに求められる要件に対して設計/構造的に適していないと説明した。

レッドハットでは、こうしたニーズに対応するべくOpenStackにコミットしており、Icehouseにおいてはバグのフィードバック数もダントツの1位で、その数は2位の企業の倍以上となる400件弱に達するという。

RHEL-OSP 5の主な特徴

今回リリースされたRHEL-OSP 5の主な特徴としては以下の7点が挙げられている。

  • Icehouse + RHEL7
  • 3年間のサポートライフサイクル
  • VMwareテクノロジーのサポート
  • ワークロード配置の改善
  • 米国および英国の新しい暗号セキュリティ要件に対応する仮想マシンのサポート向上
  • ネットワークスタックの相互運用性向上
  • OpenStackデータ処理サービス(Sahara)

これらのうち、VMwareのサポートに関しては、vSphereおよびESXiのリソースをNovaノード用の仮想化ドライバとして使用し、OpenStackダッシュボード「Horizon」から管理可能になっているほか、OpenStackネットワーキング「Neutron」のVMware NSXプラグインや、OpenStackブロックストレージ「Cinder」のVMware Virtual Machine Disk(VMDK)プラグインをサポートしている。

レッドハット 代表取締役社長の廣川裕司氏

また、ワークロード配置については、パフォーマンスを高めるために関連ワークロードを近接させたり、柔軟性を高めるために広範なクラウド環境で分散させたりすることが可能になり、Saharaに関しては、テクノロジープレビューという位置づけであるものの、Hadoopクラスタの高速なプロビジョニングと管理を実現している。

RHEL-OPS 5で用意されたサービスレベルは、24時間365日のサポートが提供される「プレミアムサポート」と、平日9時~5時までのサポートとなる「スタンダードサポート」の2種類。スタンダードサポートの参考提供価格は、OpenStackの全てのコンポーネントが利用可能な「コントローラノード」が27万9400円(税抜)、ゲストOSとしてRHELを無制限で利用できる「コンピュートノード」が44万8400円(税抜)。

Redhatのクラウド戦略

発表会で戦略を説明したレッドハット 代表取締役社長の廣川裕司氏は、昨年末から相次いでリリースしてきたクラウド関連の同社プロダクトを整理。

オンプレミスでも重宝する仮想化環境「Red Hat Enterprise Virtualization(RHEV)」や、IaaSの構築を容易にする今回のRHEL-OSP、さらにはPaaSの構築を簡略化する「OpenShift Enterprise」といった製品を提供していることを紹介したうえで、これらの環境をまたがって統一的に管理できる製品として、昨年11月に新版をリリースした「Red Hat CloudForms」を紹介。レッドハットがエンタープライズレベルの顧客要求に応えられる技術を揃えていることを強調した。

Redhatのクラウド関連製品

なお、RHEL-OSPの今後については、管理ツールを拡充していくほか、RHEVなども包含した共通インフラを提供することに注力していくことを明かしている。