早稲田大学(早大)は7月19日、7月17日付で同大総長に提出された理化学研究所の小保方晴子研究ユニットリーダーの博士学位論文に関する調査を行う「大学院先進理工学研究科における博士学位論文に関する調査委員会」が作成した調査報告書の全文を同大Webサイトにて公開をした。
今回の全文公開は17日の会見で、同大総長の鎌田薫氏が公言していたもので、個人情報などに配慮した修正作業が終了し、各委員より公表の了解を得られたことから、掲載に踏み切ったと同大では説明している。
今回公開されたのは、82ページにわたる調査報告書の「本体」のほか、問題個所や転載元、ヒアリング対象者と実施日(対象者の一部は匿名化されている)が掲載された53ページの「付帯資料」となっている。
調査報告書の本体は、調査に至る経緯や調査目的、調査方法などを記した「序章」と、事実の経緯や論文作成過程における問題点の検証、論文内容の信ぴょう性や妥当性の検討、学位取り消し規定の該当性、論文作成過程における問題点、学位授与の審査過程における問題点などが記された「第2章 調査結果」の2章で構成されている。
なお、最後の「結語」において、調査委員会は、「本来であれば、これらの問題個所を含む本件博士論文が博士論文審査において合格に値しないこと、本件博士論文の作成者である小保方氏が博士学位を授与されるべき人物に値しないことも、本報告書で検討したとおり」と記しており、早大が博士学位を小保方氏に授与してしまったことは、同大なたびに同大において過去に博士学位を取得した多くの人々の社会的信用、ならびに同大における博士学位の価値を大きく毀損するものであったと指摘。
また、小保方氏に対しては、今回のような結果をもたらした自己の不注意さ、研究倫理に関する考え方の甘さ、論文作成の作法や知識の不十分さなどを猛省する必要があると指摘しているほか、論文の作成指導過程や学位授与の審査過程に関与した人たちにも、その結果の重大性や事故の責任の重さの自覚を促しており、最後に今回の調査報告の結果、小保方氏の学位取り消し要件に該当しないと判断はしたが、それがこの問題点の重大性を一切低減するものではないことを明言しているほか、同大の学位取り消し規定が、「不正の方法により学位の授与を受けた事実」となっている以上、今回の問題で学位を簡単に取り消すのは難しいともしており、学位授与という行為に、それだけの重みがあることを認識し、審査に関わる必要性を強調したものとなっている。