10Gイーサ対応のスイッチの価格が手頃になり、10Gイーサネット環境の導入は中小規模のネットワークの構築においても現実的な選択肢になりつつある。今回は、中規模ネットワークにおいて、NETGEAR社の10Gイーサ対応のスイッチを利用した具体的な構成案を考える。

規模別構成例で学ぶ、10Gスイッチの選び方 記事目次
小規模ネットワーク編
・中規模ネットワーク編(本記事)
・大規模ネットワーク編(Coming Soon)
###ネットワーク要件 スマートフォンやタブレットなどのスマートデバイスが普及し、既存のPC用のアプリケーションだけではなく、スマートデバイス向けのアプリケーション開発も活発に行われている。そこで、中規模ネットワークの構成例として、架空のアプリケーション開発企業を例に考えていこう。想定する要件は以下のとおりだ。
・オフィスは2フロア
・2F 開発部
・1F 営業部、人事・総務部
・社員は50名程度(各フロアに25名ずつ)
・ネットワークに接続する端末

ネットワークに接続する端末は、以下を想定している。

<表1 ネットワークに接続する端末>

種類 ネットワークインタフェース 台数 備考
通常業務用PC 1000BASE-T、IEEE802.11b/g/n 50 モバイルノート
開発用サーバ 10GBASE-T×2 2 仮想サーバでさまざまなプラットフォームに対応
開発用PC 1000BASE-T、IEEE802.11b/g/n 3 開発するアプリケーションの動作確認用
スマートフォン/タブレット IEEE802.11b/g/n 10 開発するアプリケーションの動作確認用
ネットワークプリンタ 1000BASE-T、IEEE802.11b/g 2
NAS 10GBASE-T×2 1 容量は4Tバイト

そのほか、メールや勤怠管理などはクラウドベースの業務システムを利用し、FTTH(1Gbps)によるインターネット接続を行う。なお、サブネットの分割は以下のように行う。

・開発部サブネット
・開発部サブネット(開発用)
・営業部サブネット
・人事・総務部サブネット
・NAS用サブネット

開発用サーバは、さまざまなプラットフォームのアプリケーション開発のために、物理的なサーバ上で複数の仮想サーバを稼働させることを想定している。開発用サーバが利用できなければ、業務に大きな支障をきたすことになる。そのため、開発用サーバのネットワーク接続をどのように考えるかがポイントだ。

ネットワークの構成例

次の図が上記の要件を満足するためのネットワーク構成だ。一番のポイントは、「開発用サーバの高速かつ冗長化されたネットワーク接続」だ。

図1 物理構成

図2 論理構成

<表2 ネットワーク構成機器>

機器名 台数 単価(税別) 金額(税別) 備考
L2スマートスイッチ XS712T 1 44万円 44万円 12ポート 10GBASE-T
L3フルマネージスイッチ M5300-28G3 1 49万円 49万円 24ポート 1000BASE-T、2ポート 10GBASE-T
スマートスイッチ GS748T 2 8万6,000円 17万2,000円 48ポート 1000BASE-T
アンマネージプラススイッチ GS108E 1 1万円 1万円 8ポート 1000BASE-T
ワイヤレスLANアクセスポイント WNAP320 1 4万円 4万円 IEEE802.11b/g/n対応 アクセスポイント
ReadyNAS 716X 1 162万円 162万円 2ポート 10GBASE-T、4TB SATAディスクパック6台
ギガビットルーター R7000 1 オープン オープン IEEE802.11ac対応

*上記単価および金額は定価ベースで、市場価格はさらに安い価格で取引されている。

L2スマートスイッチ XS712T

L3フルマネージスイッチ M5300-28G3

画スマートスイッチ GS748T

アンマネージプラススイッチ GS108E

ワイヤレスLANアクセスポイント(2.4GHz) WNAP320

ReadyNAS 716X

ギガビットルーター R7000

ネットワークの特徴

この構成例では、開発用サーバは10GBASE-Tのリンク2本で接続していることが大きな特徴だ。開発用サーバは内部で複数の仮想サーバを稼働させて、さまざまなアプリケーションのプラットフォームに対応させている。開発用サーバのネットワーク接続が失われてしまうと、内部で稼働している仮想サーバのリンクもすべて失われてしまい、その影響範囲がとても大きくなることが考えられる。そこで、開発用サーバを10GBASE-Tのリンク2本で接続することで、耐障害性を高めている。また、2本のリンクで負荷分散できるので、仮想サーバへの通信でネットワークインタフェースがボトルネックになることはないだろう。

なお、仮想サーバを接続するレイヤ2スイッチとして選定したXS712Tは、第1回のXS708Eに比べて10Gイーサネットポートを多数備えているだけではなく、スタティックルーティングもサポートしている。簡易的なレイヤ3スイッチとしても利用可能だ。また、プロテクトポートによるポート間のアクセス制御やVoIPパケットを自動的に優先するAuto-VoIPなどの付加機能も備えており、さまざまなネットワーク要件に対応できる製品となる。

そして、ファイルサーバとして利用するNASにはアクセスが集中することが想定される。ReadyNAS X716も10GBASE-Tのリンク2本で接続することで、高速かつ冗長化されたNASへのアクセスが可能だ。さらに、論理構成上、開発用サブネットを他の部署ごとのサブネットと分けている。これにより、アプリケーション開発でのテストなどで発生したトラフィックは、開発用サブネットの中だけで終端でき、業務用サブネットへの影響を限定することができる。

まとめ

今回例に挙げたアプリケーションの開発環境だけではなく、サーバの仮想化は一般的になってきている。多くの仮想サーバをホストする物理サーバのネットワーク接続をしっかりと考えることがとても重要だ。複数の10GBASE-Tのリンクで物理サーバを接続することで、仮想サーバは高速かつ信頼性の高いネットワーク接続が可能になる。

サーバ仮想化を導入する中小企業ネットワークにおいて物理サーバを接続するための10Gイーサ対応スイッチとして、NETGEAR社のXS712Tは検討に値する製品だろう。

次回は、大規模なネットワークを対象に取り上げる。