東京大学は7月15日、現行のリチウムイオン電池の7倍もの高エネルギー密度を有する、酸化物イオンと過酸化物イオンの間の酸化還元反応を利用した2次電池システムを開発したと発表した。

同成果は、同大大学院 工学系研究科の水野哲孝教授らによるもの。日本触媒と共同で行われた。詳細は、英国科学雑誌「Scientific Reports」のオンライン版に掲載された。

同システムでは、正極反応として酸化リチウムと過酸化リチウムの間の酸化還元反応を、負極反応として金属リチウムの酸化還元反応を用いた場合、両電極活物質重量あたりの理論容量は897mAh/g、電圧は2.87V、理論エネルギー密度は2570Wh/kgになるという。この数値は、現在のコバルト酸リチウム正極と黒鉛負極を用いたリチウムイオン電池のエネルギー密度が、両電極活物質重量あたり370Wh/kgであり、約7倍にも達する。新方式の電池は、リチウム空気電池の理論エネルギー密度の3460Wh/kgには及ばないが、従来のリチウムイオン電池と同様の密閉型構造となるため、信頼性、安全性に優れているとしている。

今後は、電極中の過酸化物の状態、コバルトの役割を明らかにし、電極活物質の最適化を進めることで、理論容量に近づけることを目指す。さらに、電池の安全性、寿命などの総合的評価を進め、革新的2次電池として実用化に取り組むとコメントしている。

同電池システムの放電反応の模式図。正極で過酸化リチウムと酸化リチウムの間の酸化還元反応を利用する