東北大学と京都大学(京大)は7月14日、リチウムイオン電池の長寿命化・大容量化に寄与するシリコンのオープンセル型ポーラス粉末を開発したと発表した。

同成果は、東北大 金属材料研究所の和田武助教、加藤秀実准教授、京大大学院 工学研究科の市坪哲准教授らによるもの。詳細は、「Nano Letters」のオンライン版に掲載された。また、9月24~26日に名古屋大学 東山キャンパスにて開催される「日本金属学会2014 秋期大会」において口頭発表される。

研究グループは、既存のリチウムイオン電池の負極活物質に用いられている炭素系材料と比較して、10倍以上の理論容量となる約4000mAh/gを有するシリコンを用いて、リチウムイオン電池の高容量、高充放電速度および高サイクル特性を実現することを目指した。そこで、シリコンの構造単位を微粒子と捉え、電解質と接触する表面積が大きく、かつリチウム化に伴う体積膨張やこれに伴う歪を緩和する適度な空間を内包する構造として、オープンセル型ポーラス構造が理想的形状の1つと判断した。

そして、マグネシウムとシリコンから成る合金がビスマス金属溶湯中において、マグネシウム原子を溶出しやすい一方で、シリコン原子を溶出しにくい性質を利用し、金属溶湯中での脱成分反応を用いて、シリコンのオープンセル型ポーラス粉末を開発した。また、これを活物質に用いたリチウムイオン電池が、現行のリチウムイオン電池よりも大きな容量を有し、さらにサイクル寿命にも優れることを明らかにした。同材料により、携帯電話・スマートフォンやノート型PCなどのモバイル機器の使用時間や電気自動車の走行距離の拡大に繋がることが期待できるとコメントしている。

オープンポーラス型シリコン負極活物質とリチウム化後の形態変化を示す模式図。ポーラス体を形成するシリコン部分(=リガメント)がリチウム化に伴って体積膨張しても、周辺のポア(気孔)がこれを緩和することができる