京都大学は7月11日、既存のリチウムイオン電池からの置き換えが可能な高エネルギー密度を有するマグネシウム金属2次電池を開発したと発表した。

同成果は、同大大学院 人間・環境学研究科の内本喜晴教授、折笠有基助教、同大大学院 工学研究科の陰山洋教授、白眉センターのタッセル・セドリック特定助教らによるもの。高輝度光科学研究センター(Spring-8)と共同で行われた。詳細は、オンライン科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された。

マグネシウム2次電池は高い理論容量密度を持ち、資源量が豊富で、安全性が高いという利点から、リチウムイオン電池を超える2次電池として実用化が期待されている。しかし、2価のマグネシウムイオンは1価のリチウムイオンと比較して、相互作用が強く、固相内で拡散しにくく、電極反応が極端に遅いことが問題だった。また、マグネシウム金属を繰り返し溶解析出することが可能な、安定かつ安全に充電・放電を行うためのマグネシウム電解液が見つかっていない。つまり、マグネシウム2次電池の創製には、正極・電解液それぞれの問題点を解決する必要があった。

今回の研究では、正極材料の結晶構造を精密に制御することにより、マグネシウムイオンの拡散パスを確保したMgFeSiO4正極材料を開発した。同材料を用いることで、既存の正極材料と比較して2倍のマグネシウムイオンを挿入脱離することが可能となった。同材料は、Si-Oの結合によって安定化されているため、長期間にわたって充放電を繰り返すことができる。さらに、研究グループは、マグネシウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(Mg(TFSI)2)とトリグライム(Triglyme)を組み合わせた電解質によるマグネシウム金属負極の安定な動作を実証した。なお、今回の研究では、大型放射光施設Spring-8の高輝度放射光を用いることにより、安定で高エネルギー密度の充放電反応のメカニズムの解明に成功した。そして、この正極と電解質に、マグネシウム金属を負極として組み合わせて、世界最高性能のマグネシウム2次電池を作製できたという。

今後、マグネシウム2次電池の実用化が加速され、安価で安全な電気エネルギーの貯蔵媒体が実現することで、変動の大きい再生可能エネルギーを貯蔵するなど、新しいエネルギー安定供給の道が拓かれることが期待されるとコメントしている。

今回実証された高エネルギー密度、高安全性を有するマグネシウム2次電池