日本集中治療医学会は7月14日、東京女子医科大学病院で2歳男児が死亡した医療事故を受け、日本では禁忌とされてきた、小児集中治療室(PICU)における人工呼吸中の子供に対する鎮静薬「プロポフォール」に対する医学的妥当性および安全性を代替薬との比較も含めて検討する研究班を立ち上げることを決定したと発表した。

また、4月にプロポフォール使用の現状把握と今後の適正使用指針の作成に向け、日本集中治療医学会が認定する専門医研修認定ICU286施設と特定集中治療加算料を算定している小児集中治療室(PICU)29施設(うち8施設が専門医研修認定施設)の計307施設を対象に、アンケート調査を行ったことを明らかにし、その結果を公表した。

アンケートの回答は、102病院/106施設より得られ(同一病院に複数の集中治療施設がある場合もある)、回収率は35%であったという。アンケート項目は、「小児に対するプロポフォールの単回鎮静」、「成人に対するプロポフォールの持続鎮静」、「小児に対するプロポフォールの持続鎮静」、「プロポフォール持続投与中の検査」、「PRIS(propofol infusion syndrome:プロポフォール注入症候群)経験の有無」といったもの。

このうち、小児に対しプロポフォールの持続鎮静を行っているICUは20施設あり、そのうち使用量の上限を定めているICUは5施設で、投与時間の上限を設定しているICUは4施設。PICUに限定すると、7施設であったという。

また、小児の持続鎮静にプロポフォールを使用する際に、親権者から同意書を得ているICUは使用施設中3施設で、倫理委員会など病院の許可を得ているICUは1施設のみ(医療安全委員会承認)であることも判明した。

さらにPRISまたはPRISが疑われる症例を経験したことがあるICUは11施設で、いずれもPICU以外のICUであったが、3施設は小児例であったという(7施設が成人、1施設が無回答)。

同学会は、今回のアンケートから、プロポフォールは、成人集中治療では一般的に使用され、小児集中治療においても単回投与使用に加え、持続投与による鎮静も稀ではない現状が判明したとしており、この問題が、患者と医療者、双方にとって極めて重要かつ緊喫な課題であると判断し、今回の研究班の立ち上げに至ったと説明している。なお、今回の研究については、同学会会員のみならず、日本麻酔科学会や臨床疫学専門家の協力も仰いだ、総力的な取り組みであるとしている。