2020年のオリンピックに向けた競技場のデザインを巡る議論が起こったり、重要文化財級の建物があっさり取り壊されたり、かと思えば富岡製糸場が文化遺産に登録されて保護されることが決まったりと、狭い日本でも建物や街づくりに関わるニュースはつきることがありません。数十年の短いスパンで街や建築に急速な変化が起こる日本のような国はむしろ珍しく、海外であれば100年前の建物が残っている国のほうが多いと言えるでしょう。
そこで、日本在住の外国人20名に「日本の都市デザインについてどう思いますか?」という質問をしてみました。
■一体感がなくて疲れます。もう少し日本の伝統的な建築の要素を現代の建築に反映させればよいと思います。(フランス/30代後半/男性)
■ごちゃごちゃしている。景観をもっと気にして、緑を増やし、建物の高さや色、デザインなどを統一すればいいと思う。(スウェーデン/40代後半/女性)
■ごちゃごちゃして統一性がない。色や形をそろえたほうがよい(スリランカ/50代後半/男性)
■いろんな種類の建物が乱立して、統一感に欠けると思います。(ドイツ/30代後半/男性)
■ゴチャゴチャしている。もっと緑がほしい。(イギリス/40代後半/男性)
■公園などが少ないと思います。(ポーランド/20代後半/女性)
建物のデザインに統一性がないという面については、実際には街の景観を損なわないようにする条例がある街(洗濯物が外に干せないなど)や、建物の高さの規制がされている区域、また京都のように景観条例がある街もあるだけに、一概に無秩序なわけでもないのですが…。京都のマクドナルドの看板が赤と黄ではなく茶とピンクなのはこうした景観条例によるもので、街ネタとしてもおなじみです。
緑の多さで見ると、都市部のほうが意識して配置されているかもしれませんね。マンションには公園を設置する義務がありますし、景観の向上などを目指して道路に並木を作っていたりもしますよね。
■ごちゃごちゃしていて好きではない。道路にカーブが多く、整理整頓されていない印象がある。(シリア/30代前半/男性)
■狭くて不便だし、住所がわかっていてもたどり着けません。でもゴミをあまり見かけないし街はきれいですね。都会の大きなビルにはきれいなものもあります。(オーストラリア/40代前半/男性)
■ぐちゃぐちゃすぎる。(トルコ/20代後半/女性)
■まったく考えていない気がします。(アメリカ/30代後半/男性)
■めちゃくちゃな印象があります(イタリア/30代後半/女性)
複雑な区画は、昔ながらの区画が残っていて空襲や震災に遭わなかった地域の場合が多いですね。確かに、住所の通りに行っているはずなのに目当ての場所が見つからないという経験は筆者にもあります…。
その対極にあるのが、京都や奈良などの古都ではないでしょうか。「碁盤の目」と表される方眼のような区画が残っているからか、特に京都などでは正式な住所でなく通り名だけで郵便物が届く、という不思議な(でも便利な)事実があります。
■緑があちこちにあるのでよいです。(インドネシア/30代後半/男性)
■よく計画されていると思う。緑と建築部分のバランスがよく取れている。(ベトナム/30代前半/女性)
■そこに住む人間を考慮した都市デザインはすごいと思います。(ブラジル/50代前半/女性)
■便利。(ペルー/40代後半/男性)
■高度な秩序があるが個性がたりない。(スペイン/30代後半/男性)
■よくデザインされているが、人のことを考えていなさそう。(インドネシア/30代前半/女性)
アジア地域の方々からはよい評価もちらほら。比較的新しく都市計画が進められているような都市にお住まいなのかもしれません。ただ、その中でも手放しで好評価というものは少なく、個性のなさや住む人のことを考えていないとの指摘も…。経済優先の高度成長期、マンションが乱造されたバブル期なども経たためか、情緒を揺さぶるような街並みを持つ地域はかなり少なくなってしまいました。しかし2010年以降になり、少しずつではありますが新たな街づくりを考えたり、見直したりしようとする動きが出てきている様子。日本人としても今後の動きに期待したいと思っています。
予想通り(?)厳しい意見が多かった今回のアンケート。ただ、京都のように景観条例がきちんと定められていたり、飛騨高山のように「伝統的建造物群保存地区」として守られた地域もあったりと、日本の街がすべて無秩序な景観だというわけではないことも知っていただきたいなと思います。とはいえ、都市部はもう少し落ち着ける、まとまりある建物の雰囲気になってもいいような気はしますが…。