SAPジャパンは7月10日、日本のスポーツ・ビッグデータ市場へ本格参入することを発表した。SAPとしては、2013年から25番目の業種としてスポーツ&エンターテインメント産業へソリューションを提供している。
バイスプレジデント Chief Innovation Officerを務める馬場渉氏は、同社のスポーツ関連ビジネスが「Sports&Big Data」「Sports&Life」「Sports&Safe」という3つの柱から構成されていると説明した。
今回発表が行われた事業「Sports&Big Data」は、「Fan Engagement」「Team Performance」「Revenue Growth 」「Business Operations」の4つの領域に分類することができる。
4つの領域のうち、スポーツ産業としての特色が強いのが「Fan Engagement」「Team Performance」だ。「Revenue Growth 」「Business Operations」は、同社がこれまで他産業において展開してきたビジネスのノウハウを生かすことができる。
馬場氏は「Team PerformanceがSAPにとって一番遠かった領域」と語った。現在、ブラジルでサッカー ワールドカップが開催されているが、ドイツのサッカーのナショナル・チームで、同社が開発したHANAベースのシステム「SAP Match Insights」が利用されているという。
「SAP Match Insights」は、トラッキング・カメラや選手に装着したセンサーからデータを取得して、さまざまな項目を掛け合わせてデータを分析する。1試合当たり、4,000万ものデータを取得できる。
馬場氏によると、現在、ナショナル・チームの監督を務めるヨアヒム・レーヴ氏は、選手1人当たりのボールの保持時間を短縮することを目標に定めたが、Match Insightsの導入によって、1人当たりのボール保持時間が2.8秒から1.1秒に短縮されたという。
日本における最初の取り組みとしては、スポーツデータの解析・配信を行うデータスタジアムが開発を進めているサッカー/野球向け次世代サービスにSAP Cloud powered by SAP HANAが採用されており、イノベーションパートナーとして研究・開発を支援していく。
データスタジアムのサッカー向け次世代サービスでは、リアルタイムにトラッキングした選手やボールの動きに同社独自の指標を掛け合わせたリアルタイムプレー予測の実現を目指し、また、野球向け次世代サービスでは、進行中の試合状況と選手の過去のプレーデータを組み合わせて得失点確率を算出するなどのリアルタイム戦略サポートの実現を目指している。
同社がスポーツ・ビッグデータ市場に取り組む狙いには、「日本のスポーツが世界一になることに貢献したい」「ビジネスで生まれたイノベーションをスポーツに、スポーツで生まれたシンプリケーションをビジネスに生かしたい」「スポーツ自身のイノベーションとスポーツによるイノベーションを実現したい」ということがある。
この狙いについて、馬場氏は「スポーツ産業におけるイノベーションは、当社が取り組んでいる他の24の産業にメリットがもたらされる。ひいては、日本の産業全体の発展に繋がると思う。また、このビジネスに取り組んで、オトナはスポーツの話をする時にイキイキとしていることに気づいた。スポーツの力を借りて、日本のビジネスの発展を図っていきたい」と述べた。