インターネットイニシアティブ(以下 IIJ)と日本マイクロソフトは7月10日、IIJのクラウドサービス「IIJ GIO(ジオ)サービス」と、日本マイクロソフトのパブリッククラウドサービス「Microsoft Azure (以下 Azure)」を連携させたマルチクラウドサービスの提供に向けて協業すると発表した。

第一弾として、IIJは日本初のAzure閉域網接続サービス「ExpressRoute」を日本国内で提供する。

協業を発表したインターネットイニシアティブ 代表取締役社長 勝栄二郎氏(右)と、日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏(左)

ExpressRouteは、Azureへの閉域網接続を提供するサービスで、マイクロソフトが欧米ではすでに数社のパートナーと協業し、同サービスを提供している。日本市場においても、IIJは2014年10月より受注活動を開始する。

ユーザーがAzure閉域網接続サービスを利用するには、「ExpressRoute」(提供元:マイクロソフト)、「IIJ GIOプライベートバックボーンサービス」を経由し、ExpressRouteを利用できる環境を提供する「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure」(提供元:IIJ)、ユーザーの拠点とIIJネットワークのゲートウェイを接続する広域LANなどのWANサービス(提供元:NTTやKDDI、ソフトバンクテレコムなどのキャリア)の3つを利用する必要がある。

「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure」の利用イメージ

「ExpressRoute」と「IIJクラウドエクスチェンジサービス for Microsoft Azure」は、それぞれ10Mbps/50Mbps/100Mbps/500Mbps/1Gbpsの5種類のメニューが用意される。料金は今後発表される予定だ。

顧客の拠点と接続するIIJのゲートウェイは、国内4カ所(東京・大阪に2カ所ずつ)用意され、NTT東日本、NTT西日本、KDDI、ソフトバンクテレコム、TOKAIコミュニケーションズ、KVH、アルテリア・ネットワークス、ケイ・オプティコムの各キャリアに対応する。

日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバー プラットフォーム ビジネス本部長 佐藤久氏

これにより、顧客はAzure及びIIJ GIOにマルチキャリアで閉域接続し、サービスを利用することが可能となり、AzureとIIJ GIOを組みあわせて利用できる。

閉域網サービス「ExpressRoute」を利用するメリットについて、日本マイクロソフト 業務執行役員 サーバー プラットフォーム ビジネス本部長 佐藤久氏は、「エンタープライズのユーザーがパブリッククラウドにおいて一番重視するのはセキュリティで、ネットワーク安定性も気にされている。IPsecによるVPNでも安全だが、トラフィックがベストエフォートである点や、一般のインターネット網を利用しているため、セキュリティ面での懸念があった」と説明した。

ExpressRouteを利用するメリット

インターネットイニシアティブ専務執行役員 クラウド事業統括 時田一広氏

また、インターネットイニシアティブ専務執行役員 クラウド事業統括 時田一広氏は、「これまでクラウドは、今あるオンプレミスのシステムをクラウドに持っていって利用する流れだったが、今後はクラウドとオンプレミスを一緒に管理するエンタープライズクラウドが本格化していく。これからクラウドは、次のフェーズに移っていくので、マルチクラウドサービスを展開していきたい」と語った。

今後両社は、ExpressRouteのサービス提供開始に向けて技術協業を進めるとともに、共同マーケティング活動及びお客様への提案活動における連携を強化し、今後3年間で200社への本サービス提供を目指す。

インターネットイニシアティブ 代表取締役社長 勝栄二郎氏

インターネットイニシアティブ 代表取締役社長 勝栄二郎氏は、今回の協業について「今回の協業により、IIJ GIOとAzure、それとお客様のオンプレミスの環境を安全に接続でき、マルチクラウド環境が実現する。クラウドの成熟に伴い、用途にあわせて、複数のクラウドサービスを適宜使い分けたいというマルチクラウドニーズが高まってきている。今後は、マルチクラウドの利用形態がスタンダードになっていくだろう。今回の協業によりAzureとオンプレミスを補完的に利用することで、IIJ GIOの価値をさらに高め、お客様にとって最適なクラウドサービスをワンストップで提供していきたい」と述べた。



日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏

一方、日本マイクロソフト 代表執行役社長 樋口泰行氏は、「マイクロソフトは、クラウドOSというコンセプトのもと、パブリッククラウドだけでなく、オンプレミスと連携できるハイブリッドクラウドを推進している。IIJ様には新しい技術を早期に導入しようというベンチャースピリットがあり、重要なパートナーだ。今回の協業は、まさにWin-Winの関係で、お客様の多様化するニーズこ応えることができる体制が整った。今後は共同で営業、マーケティングを行っていく」と語った。