6月25日~27日にかけて、東京ビッグサイトでは「日本ものづくりワールド」が開催された。「第25回 設計・製造ソリューション展示(DMS)」には数多くの製造業向けITソリューションを持つメーカーが出展する中、ストラタシス・ジャパンは3Dプリンタの新製品「Objet500 Connex3」を含む多彩な製品・ソリューションを出品し、ブースには多くの来場者がつめかけていた。 今回ストラタシスのメディアツアーに招待してもらったので、ブースの様子を順を追って紹介しよう。
硬質からゴムライクまで、更にカラーを再現した物性の異なる千種類以上に対応!新製品「Objet500 Connex3」をはじめ多彩なニーズに応える製品群
まず目に入ったのは、米ストラタシス社が1月に発表し、日本国内でも2月より販売が開始されたPolyJet方式の3Dプリンタ「Objet500 Connex3」だ。同製品の特徴は、なんといっても同時に3種類のマテリアルを組み合わせてカラー造形ができること。業界内でも、これまでの市場の流れを大きく変える画期的な“ゲームチェンジャー”として話題を呼んでいる。
マテリアルは透明・半透明・不透明と豊富に用意されており、1回のジョブで最大46色を使ったプリントが可能。同時に使用できる色は10種類のカラーパレットで提供している。また、硬質カラーは1回のジョブで最大46色、透明やゴムライクとのバリエーションは、1回のジョブで最大81種類をプリント可能だということも魅力となっている。そのほか、超高解像度な16μmの積層ピッチによって、滑らかな曲線や細かいディティールを正確に再現できるのも魅力だ。
ブース内では実際にObjet500 Connex3を使った造形のデモが行われていた。壁面にはカラフルな造形物とマテリアルも展示されており、来場者の注目を集めていた。Objet500 Connex3だけでなく、ブース内にはその他の「Objet」シリーズや、FDM(Fused Deposition Modeling:熱溶解積層形)方式の3Dプリンタ「Fortus」シリーズも多数展示。FDMの特長は、さまざまなマテリアルで造形が可能なPolyJet方式に対し、多品種小ロットの最終製品や治具・金型など一定以上の強度が必要な製品の造形に適している点だ。
グループ企業の製品・サービスにも注目
米ストラタシス社が2013年6月に買収した米MakerBotのパーソナル3Dプリンタ「MakerBot Replicator Mini」も展示されていた。これはFDM方式の3Dプリンタで、コンパクトかつ低価格であることが大きなポイント。個人向けの用途はもちろん、企業であれば各部署や個人単位など“1人1台”という感覚で配備できる機種となっている。また、10万以上のデータがダウンロードできる3Dファイル共有サイト「シンギバース」、3Dデータを販売する「デジタルストア」、デザイナー育成プログラム「イノベーションセンター」といった各種サービスも展開。造形したマスコットをカプセルトイにして配布するというユニークな試みも行われており、スタッフに詳細を尋ねる参加者が後を絶たなかった。
米ストラタシス社の子会社である米RedEyeでは、最終製品や治具・金型などを3Dプリンタで直接製作する「DDM(Direct Digital Manufacturing)」の強みを前面に押し出していた。バンパーやメーター周りなど自動車用の大型部品からスキー板まで、ハイグレードの工業プラスチックで造形された展示品の姿もあった。
「Objet500 Connex3」をプラットフォームにマテリアル開発にも注力
今回は特別に、Stratasys AP Limitedのアジア太平洋地域&日本担当ゼネラルマネージャーを務めるジョナサン・ジャグロム氏がインタビューに答えてくれた。
まず米MakerBotの買収については「メーカーボットは、パーソナル3Dプリンタの分野におけるリーディングカンパニーであり、買収時で63%もの市場シェアを誇る素晴らしい企業です。弊社もハイエンド向け3Dプリンタのリーディングカンパニーであり、近年はパーソナル3Dプリンタの領域も重要性が非常に高まっていることから、お互いの長所を活かした買収となりました」と語る。
また、2014年4月に買収した米Solid Conceptsと米Harvest Technologiesに関しては、販路であるサービスビューローの統合を通じて、パーツビジネスを拡大する思惑がある。この2社と米RedEyeをひとつの事業ユニットとして統合することでDDMの領域を強化し、3Dプリンティング技術をより製造現場で使いやすいようにしていくそうだ。
日本市場ならではのニーズや特徴については「日本のお客さまはワールドワイドで見ても注文が厳しく、極めて要求水準が高い市場といえます。これは大変喜ばしいことで、弊社が高信頼かつ安定性に優れた製品を供給できる理由は、日本市場が求める高い水準に応えようとしてきたからです」と語るジャグロム氏。ストラタシス社にとって日本はベンチマークに最適な市場であり、同社のビジネスにもプラスの要素を与えているそうだ。
また、ストラタシス社は製品の高い信頼性と安定性だけでなく、現地代理店との強力なパートナーシップを築くことでも業界内で高い評価を受けている。この点についてジャグロム氏は「弊社の強みはパートナー企業の力とイコールであるという考え方をモットーに、日頃から確固とした強いパートナーシップを築くために尽力しています」と語る。
具体的なサポートとしては、マーケティングや営業支援、トレーニング、販促ツールの提供などを積極的に実施。5月にはアジア中のチャネルパートナーのマーケティングマネージャを招待し、香港でマーケティングに必要なオンラインツールを学ぶ3日間のマーケティングワークショップを開催したそうだ。「それぞれのローカル市場において、最適なマーケティング方法を知っていただくことが目的となっています。こうした取り組みは今後も常に行っていく予定です」と続けた。
最後に今後の戦略を聞いたところ「Objet500 Connex3は、将来の可能性を大きく広げる画期的な新製品です。この製品をプラットフォームとして、マテリアルの開発に注力していきたいですね」という答えが返ってきた。製造現場においては、プロトタイプの製作時にできるだけ最終製品に近いマテリアルを使える方がありがたい。こうしたニーズを含めて、より多くの分野で使用できるマテリアルを供給し、市場拡大を目指すのが狙いだ。
一方でFDM方式に関しても、マテリアルやプラットフォームの追加を予定しているという。 「これからは最終製品や治具・工具などを3Dプリンタで製作する機会が増えると予想されるため、こうした市場の成長に合わせるための開発作業も重要です」と語ってくれた。
米MakerBotを買収することで、ハイエンドだけでなくパーソナル領域でも3Dプリンタのリーディングカンパニーへと成長したStratasys。近年は3Dプリンタの需要が急激に増加しているだけに、今後の新たな展開にも期待したいところだ。
近年話題の3Dプリンタだが、「実際にどのようなことができるのか分からない」という声は意外に多いもの。そこで、ストラタシス・ジャパンに、自動車業界編/コンシューマ向け業界編/医療機器業界編の3分野について、それぞれQ&A形式で3Dプリンタの疑問に答えてもらった。
【自動車業界編】http://news.mynavi.jp/kikaku/2014/06/17/001/
【コンシューマ向け業界編】http://news.mynavi.jp/kikaku/2014/06/23/001/
【医療機器業界編】http://news.mynavi.jp/kikaku/2014/06/30/001/