ネットワーク用語を「難しい」「苦手だ」と感じるのは、その多くが可視化できない概念的なものであるからだろう。加えて、これらは専門用語であり略称も使われる。聞き慣れるまではその都度、正式名称を思い浮かべてから用語の意味を考えるなど、煩雑な思考プロセスを経なければならない。こうした直接のイメージにつながらない点も、多くの技術者に苦手意識を植え付ける一端を担っているようだ。
元SEの筆者も新卒の頃、基本情報技術者試験に向けてネットワーク用語を勉強していたが、目に見えないものを理解することは難しく、丸暗記することも苦しいと感じた記憶がある。
ITの世界を、図や絵で解説してくれる
同じく元SEのきたみりゅうじ氏著書『図解でよくわかるネットワークの重要用語解説』(発行 : 技術評論社)では、目に見えない、ゆえによくわからないネットワークの世界を、図や絵で解説することによりぐっと身近に感じることができる。
解説とともに差し込まれている図の特長は、サーバやクライアントなどネットワークを理解する上で基本となる用語を、擬人化していることにあるだろう。これによって、ネットワーク上での作業を生活の中の出来事に置き換えて考えられ、頭のなかでイメージ化しやすくなるのだ。
例えば、最初に掲載されているネットワーク概論では、サーバーをレストランのコンシェルジュ的なウエイターに、クライアントを来店客に仕立てて両者の役割を説明している。基礎知識がまったくない読者にもわかるよう、まさに"噛み砕いて"解説しているわけだ。IT用語が並ぶ一般的な解説書とは基本的な考え方から異なる書籍なのである。
筆者も、勉強を始めた当時にこの本に出会っていたら、もう少し楽に理解し、覚えることができたのではないかと思う。
用語集だけじゃない、入門書という使い方
本書は、次の8つの章で構成されている。
- ネットワーク概論
- OSI参照モデルとTCP/IP基礎編
- ローカル・エリア・ネットワーク編
- ワイド・エリア・ネットワーク編
- ハードウェア編
- サービス・プロトコル編
- インターネット編
- ケータイ編
用語集としての役割はもちろん、ネットワークの基礎から順に説明する構成となっているため、序章から順に読み進めても違和感がないだろう。また、既出の用語が別の解説に使われているときも、軽く説明文が付いているため、前のページに戻る必要もない。そのため、入門書としての利用も可能だ。
これから勉強を始める新卒のSEや、一度勉強を始めて挫折した人など、主に初心者が対象。なかでも特に、ITの世界に苦手意識を持ってしまった人に手にとってほしい1冊となっている。
なお、本書は2003年に初版を発表し、6月時点で第4版まで発売している。