米Googleが"忘れられる権利"を支持する欧州司法裁判所(ECJ)の裁定に基づき、申請を受けて削除したリンクを復活させていることが明らかになった。7月4日、英BBCのラジオ番組に登場したGoogleの欧州担当コミュニケーショントップであるPeter Barrons氏は「実践しながら学んでいる」と説明した。

忘れられる権利とは、個人が自分に関する情報が掲載されているページなどを検索結果から削除するよう要請する権利を認めるものだ。

ECJは今年5月、あるスペイン人が主張する忘れられる権利を認め、その人物に関する記事の削除要請に応じるようにGoogleに命じた。これは記事そのものの削除命令ではなく、記事へのリンクとなる。この判例が出たことで、欧州では多数の削除要請が上がっていると報じられている。

英紙Guardianは7月2日、スコットランドのプレミアリーグの審判だったDougie McDonald氏に関連する3件の記事がGoogleの検索結果から削除されたと報告した。McDonald氏は2010年10月のセルティックFC対ダンディー・ユナイテッドFCで審判を務め、セルティック側にペナルティキックを認めた理由に虚偽があったことで最終的に退任した人物だ。Guardianはその当時の記事がGoogle.com(米国版)では検索の上位に表示されるのに、Google.co.uk(英国版)では検索結果に表示されなくなったと報告していた。

BBCによると、記事へのリンクはその後復活したとのこと。BBCのRadio 4に登場したBarrons氏は法を順守しなければならないことを認めながら「実践しながら学んでいる」と説明した。

ECJの裁定では、「古い、関連性がない、以前は関連性があっても現在はなくなった」ものに対してリンク要請に応じなければならず、Barrons氏はすべての削除要請に応じているという批判を否定し、「最大の責任をもって対応している」とGoogleの方針を説明したという。

さらにBBCによると、経済記者のRobert Peston氏が2007年に投稿したブログ記事が削除されたことをGoogleに通知されたという。記事は2007年のもので、Merrill Lynchの元CEO、Stan O’Neal氏に関するもの。削除要請を行った人物は明かされていないが、記事ではなく記事の下に表示される読者のコメントに関連しているとGoogleは説明しているようだ。このほか、Mail Onlineの記事も削除されていたという。

欧州委員会のスポークスパーソンRyan Heath氏は、Peston氏のブログを削除するという行為について、BBCに対し「良い判断ではない」と述べている。同時に、削除要請に応じることはGoogleにとって簡単なことではなく、対応する方法を見出ださなければならないとの見解を示したという。

自社記事へのリンク復活後にコメントしたGuardianは、「インターネットの管理という点で、Googleに大きな役割を与えることになる」としながら、記事が検索結果から削除されたメディアが怒りの声をあげることは、裁定に不服なGoogleにとって好都合になっているとも分析している。