星が誕生する現場でガスの塊がダイナミックに運動している様子を、大阪府立大学大学院理学系研究科の大学院生の徳田一起(かずき)さんと大西利和教授らが初めて見つけた。南米チリのアタカマ砂漠の高地にある国立天文台などの大型電波干渉計、アルマ望遠鏡で観測した結果で、「ガス雲がゆっくりと収縮して星が生まれる」という従来のイメージを覆す発見といえる。6月11日付の米科学誌アストロフィジカル・ジャーナル・レターズに発表した。
おうし座にある分子雲コアMC27(地球からの距離は450光年)には、これまでの観測で、生まれたばかりの原始星があることが知られている。この分子雲コアは星の誕生領域として地球に最も近い。星の形成過程を調べるため、研究チームはアルマ望遠鏡でMC27の中心部に含まれるちりと、高密度ガス中のHCO+分子が放つ電波を詳しく観測した。
その結果、原始星から約200天文単位(1天文単位は太陽と地球の距離、約1億5000万km)離れた所に、星を持たない非常に濃いガス塊を発見し、MMS-2と名づけた。さらに約300天文単位離れた所にも、別の濃いガスの塊があった。これらのガスの塊は星が誕生する直前の段階にあると考えられる。
濃いガス塊MMS-2付近には、長く伸びたガス雲も見つかった。その長さは2000天文単位にも及ぶ。2つ以上の分子ガス塊が互いに重力を及ぼしながら激しく移動したためらしい。観測データを基に、研究チームはMC27中心部の想像図を描いた。生まれたてで、ガス流を両側に噴き出す赤ちゃん星(原始星)と、それに続く原始星の卵のガス塊2個、周りに長くたなびくガス雲が浮かび上がった。
研究チームの大西利和・大阪府立大教授は「アルマ望遠鏡で初めて、ダイナミックな星の誕生の現場が捉えられた。連星系がどう形成されていくかを探るにも役立つ観測結果だろう。このMC27には、太陽質量の4~5倍のガスがあり、まだ星を作る能力がある。さらに詳細に観測して、星々が誕生する様子を解明したい」と話している。