米HPは7月2日と3日の2日間、インドのムンバイにあるホテルにて、アジア・パシフィック地域のプレス向けイベント「HP APJ Media Summit 2014」を開催。この中で米HP APJ エンタープライズグループ シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャのジム・メリット氏(Jim Merritt)氏は、「ベンダーの中には、もうインフラの競争ゲームには参加したくないという企業もいるが、HPは違う。なぜなら、新しいテクノロジーは他社との差別化要因でもあり、ビジネスの成功要因でもあるからだ。結果として、お客様にも貢献できる。これは我々の要(かなめ)で、こういったイノベーションを起こすことで、お客様からHPを選んでもらえる」とNew Style of ITを実現するために、インフラにおいても新たなイノベーションを追及する姿勢を明確にした。
具体的には、同社では「The Machine」というプロジェクトを進めているという。
現在のコンピュータを構成するものは、汎用CPU、メモリ、ストレージの組み合わせで、これらは銅線で接続されているが、メリット氏は、この構成はデータセンターの電力使用量の増大にともなって、いずれ限界になると指摘。そこで同社は、Moonshotで行ったような特定用途向けCPUを、SDRAM、フラッシュ、HDDなどを組み合わせたユニバーサルメモリープールに置き代えていくという。これらを光で接続する新たな構成のコンピュータを同社のラボで研究開発中で、4-5年で製品化するという。
これにより、電力使用量や熱の問題だけでなく、CPUとメモリプール間の距離の制約をなくすことも可能になるという。
HPCシステム「HP Apollo 8000」
新たなテクノロジという点では、イベントでは水冷を利用した「HP Apollo 8000システム(以下、Apollo 8000)」を発表した。
Apollo 8000は、行政機関や学術機関向けのハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)システム「HP Apolloファミリ」に属する。
Apollo 8000では、高度な処理能力と水冷設計を組み合わせ、低消費電力を実現している。1ラックあたり最大144台のサーバを格納可能で、空冷式のデザインに比べて1ラックあたり4倍のテラフロップを提供する。また、高いエネルギー効率により、二酸化炭素排出量を年間最大3,800トン削減できるという。
水冷式の冷却は、パイプの中に少量の水がり、これが蒸発することによって、気化熱を奪う。サーバからの熱は、サーバのサイドにある熱交換器で取り除かれる。また、企業は、システムの冷却で発生した温水を施設の熱源として再利用することもできるという。
また、空冷式「HP Apollo 6000システム」も発表され、こちらは幅広い企業にHPC機能を提供するもので、パフォーマンス効率を重視する製品。1ラックあたり最大160サーバを格納できるという。
米HP APJ サーバー担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャのステファン・ボヴィス(Stephen Bovis)氏はApollo 8000を開発した理由を「大手の顧客は、非常に大きなコンピューティングが必要で、そこに課題を抱えている。われわれはそれに応えなければならない。HPのサーバのほとんどは空冷で、それで問題はないが、こういったユーザーには水冷のほうが効率的だ。そのために、このテクノロジーを開発した。Apollo 8000は、米National Renewable Energy Labs(NREL)用に特別に開発したものだが、今後は他のユーザーにも提供していく。ただ、我々はすべてのユーザーにHP Apollo 8000を提供しようと思っているのではない。一人ひとりのユーザーの話を聞いて、そのユーザーに合ったもっとも有効な解決策を提供することが重要だ」と語った。
さらに「HPの戦略は、テクノロジーを構築して、お客様が成果が得られるようにすることで、それこそがNEW Style of ITだ。もし、現在、ワークロードを中心に業務を行っているユーザーであれば、もっとも支援すべきユーザーということになる」述べた。
オールフラッシュ「HP 3PAR StoreServ 7450ストレージアレイ」の機能強化
また、7月3日(ムンバイの現地時間)には、オールフラッシュ「HP 3PAR StoreServ 7450ストレージアレイ」の機能強化も発表した。
「HP 3PAR StoreServ 7450アレイ」では、「HP 3PAR Thin Deduplication」および「HP 3PAR Thin Clonesソフトウェア」を含む新しい圧縮技術を提供する。ゼロブロック重複排除機能にこの技術を追加することで、使用可能な容量要件が75%以上削減。製品のGBは単価の5ドル/GBを、実質的に2ドル/GB以下にできるという。
「HP Thin Deduplicationソフトウェア」には特許取得済みのExpress Indexingが含まれ、これにより企業は、物理的な容量を最大460TBまで、使用可能な容量は最大1.3ペタバイト超まで拡張して、利用できる。
米HP APJ エンタープライズグループ HPストレージ担当 主席テクノロジスト ポール・ハーバーフィールド(Paul Haverfield)氏は「オールフラッシュアレイは、これまで非常に贅沢なもので、利用するアプリを選ばなければならなかったが、もっと多くの企業、もっと多くのアプリで使うためには、もっとコストを下げなければればならない。しかし、『HP 3PAR StoreServ 7450アレイ』の機能拡張により、オールフラッシュアレイを従来のHDDに匹敵するGBあたり2ドル以下で提供できる」と述べた。
GPUを仮想化する「HP DL380z Virtual Workstation」
ワークステーションの機能をタブレットで利用できることを紹介する米HP APJ プリンティング・パーソナルシステムズグループ PCカテゴリ倍すプレジデント 兼 ゼネラルマネージャ アンネリーズ・オルセン氏 |
イベントでは、エンドユーザー向けに、「HP DL380z Virtual Workstation」を紹介。これは、ワークステーションクラスのアプリケーションをシンクライアント、ノートPC、タブレットなどさまざまな機器から利用できる仮想ワークステーションソリューションで、サーバ側でグラフィックスを仮想化する技術。主に、製造業やデジタルエンターテインメント領域をターゲットにする。HP DL380zで同時に最大8つの仮想ワークステーションを稼働させることができるという。
このソリューションは、日本の自動車メーカーからの依頼で開発されたもので、NVIDIAの仮想化技術、およびCitrixの仮想化技術が組み合わされている。データは暗号化したうえでLANまたはWANを通じてリモートユーザーに送信することにより、セキュリティを維持している。外出先など、リモート環境に対応し、WindowsやAndroidタブレットでも利用できる。