東京農工大学は7月4日、磁性細菌の磁気微粒子合成に関わるタンパク質を解析し、結晶の形態制御メカニズムを明らかにしたと発表した。
同成果は、同大大学院 工学研究院生命機能科学部門の新垣篤史准教授、山岸彩奈博士後期課程学生らによるもの。詳細は、「Molecular Microbiology」のオンライン版に掲載される予定。
自然界の多くの生物は、環境から取り込んだ無機イオンを原料として、形や大きさの整った結晶を作り、体の一部として利用している。しかし、生物がどのように結晶の形態を制御しているかについては未だよくわかっていなかった。研究グループでは、ナノサイズの酸化鉄磁気微粒子を合成する磁性細菌をモデルとして、結晶の形態制御機構の解明に取り組んだ。特に、磁気微粒子の結晶表面に局在する4つのタンパク質に着目してそれぞれの遺伝子欠損株を作製し、タンパク質の機能解析を行った。この遺伝子欠損株の解析から、4つのタンパク質は全て酸化鉄の結晶の成長に関わることを明らかにした。また、それぞれのタンパク質で促進する結晶成長の方向や結晶表面が異なることがわかったという。この結果から、磁性細菌の細胞内では、これらのタンパク質の発現バランスによって磁気微粒子の大きさと形態が決められていることが考えられた。さらに、このような遺伝子欠損株は、人工的に化学合成することが困難なロッド状の形態や、これまで報告例のないダンベル状の磁気微粒子を合成することがわかったとしている。
今後、微生物のタンパク質の発現を制御することで、多様な形態の磁気微粒子を目的用途に合わせて自在に設計して作ることが可能になると考えられる。形態や表面の制御された磁気粒子は、MRI造影剤、がん治療における磁気ハイパーサーミア用材料、高感度免疫測定や遺伝子検査用試薬、高密度磁気記録媒体用材料、ビニルエーテルはじめとしたポリマー合成用触媒などといった応用が期待されるとコメントしている。