米HPは7月2日と3日の2日間、インドのムンバイにあるホテルにて、アジア・パシフィック地域のプレス向けイベント「HP APJ Media Summit 2014」を開催した。このイベントには、日本を含め、アジア各国から150名を超える記者が集まった。

なお、APJとはAsia Pacific and Japanの略で、日本を含むアジア地域を指す。

会場となったインド・ムンバイ市内のホテル

米HP APJ エンタープライズグループ シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャのジム・メリット氏(Jim Merritt)氏

「HP APJ Media Summit 2014」では、クラウド、ビッグデータ、モビリティ、ソーシャルのITの新たな潮流に対応できる新しいIT環境『New Style of IT』 という、同社のビジョンを中心に基調講演が行われ、HPの取り組みや新たなソリューションなどが紹介された。

最初に登壇した米HP APJ エンタープライズグループ シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャのジム・メリット氏(Jim Merritt)氏は、「HPは今年で75周年を迎えた。この間にHPは変化してきたが、イノベーションを起こすというHPのカルチャーは変わっていない。New Style of ITで、我々はお客様のITをユーザービリティ、柔軟性、拡張性に優れた自動化された新しい環境に変えていく。これが我々のフォーカスだ」とNew Style of ITの目的を述べた。

クラウド、ビッグデータ、モビリティ、ソーシャルという4つのトレンドを活用できるようにするため、レガシーなITシステムをNew Style of ITへ移行しようというと同社のメッセージを紹介するジム・メリット氏

米HP APJ エンタープライズサービス シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャのブルース・ダルクレン(Bruce Dahlgren)氏

米HP APJ エンタープライズサービス シニアバイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャのブルース・ダルクレン(Bruce Dahlgren)氏は、なぜNew Style of ITを進めていくかについて、「ユーザーはさまざまなリスク・コスト・柔軟性・モビリティへの対応やアナリティクス、セキュリティなどの課題を抱えており、これらを解決するためだ」と説明。

これを実践した事例として紹介されたのが日本のヨドバシカメラだ。同社では、実店舗からEコマース、さらにはモバイルフォンを使った顧客の購買トレンドの変化に対応するため、HPのシステムを活用したという。

New Style of ITの事例ではヨドバシカメラを紹介

ヨドバシカメラでは、モバイルフォンにも対応したEコマースの拡大、物流の改善(注文日の商品提供)を目指したという。

また、実店舗、Eコマース、モバイルのどの環境においても、同じインタフェースで同じサービスを受けられるオムニチャネル化も推進した。

さらに、新たな市場の開拓に向け、ビッグデータを活用した顧客の購買行動分析もSAP HANAで実施したという。

ヨドバシでは、これを実現するためのシステムをHPの垂直統合システムであるHP Converged Infrastructureを既存システムに追加することで実現したという。HPでは、HP Converged Infrastructureをクラウドへ移行するための1つのステップと位置付けているという。

ダルクレン氏は、New Style of ITの必要性を考える上で重要なポイントとして、スマートフォンの影響力の増大(コンシューマライゼーション)とCIOの役割の変化を挙げた。

スマートフォンの影響力の増大では、さまざまな構造化、非構造化データを集めて分析し、顧客ごとにパーソナライズされたプロモーションをスマートフォンを通して行うことを可能にするのがNew Style of ITだと指摘。

CIOの役割の変化では、今後、CIOはプロセスやオペレーションなどのビジネスプロセスにも深く関与するようになり、取締役会のメンバーになる可能性もあると指摘。これらの変化に必要となるのがNew Style of ITで、これにより、システム管理などの固定費に割いている予算を、企業戦略を決定するための予算に振り分けられるとした。そして、同氏は「CIOは変化しなければならない」と強調した。

しかし、同氏は一方で、New Style of ITには課題もあると指摘。それは、New Style of ITを自社のシステムにどのように導入すればROIを最大化できるのか、まず何から導入すればいいのかを顧客が迷っている点だ。

そのため、HPでは企業にNew Style of ITのためのアドバイスを行うコンサルティングサービスを強化したという。

ダルクレン氏によれば、同社では「HPアドバイザリーサービス」を拡充し、5つの新たなコンサルティング・サービスを開始したという。5つとは、「New Style of IT」、「アプリケーションのモダナイゼーションとクラウド」、「モビリティ」、「ビッグデータ(分析)」、「セキュリティ」だ。

5つの新たなコンサルティング・サービス

これらのサービスには、IT戦略プランニングやエンタープライズ・アーキテクチャー、ITガバナンス、組織変更管理、アプリケーションのモダナイゼーションならびに実行性のあるロードマップを対象にした、包括的なコンサルティング、評価、双方向型のワークショップが含まれるという。

またHPでは、Style of ITを活用した新たな取り組みとして、熱帯雨林での自然保護や遠隔医療も開始したことを発表した。これらの点については、次のレポートで紹介する。