産業技術総合研究所(産総研)は7月2日、微細トランジスタの不純物濃度分布を高精度に測定するための走査トンネル顕微鏡(STM:Scanning Tunneling Microscope)シミュレーション技術を開発したと発表した。
同成果は、同所 ナノエレクトロニクス研究部門 ナノスケール計測・プロセス技術研究グループの多田哲也研究グループ長、福田浩一主任研究員らによるもの。詳細は、「Journal of Applied Physics」に掲載される予定。
STMは、半導体試料表面の静電ポテンシャルや半導体内のキャリア濃度を反映するトンネル電流を測定できるため、微細トランジスタのドーパント不純物濃度分布測定への活用が期待されている。しかし、STMは測定に際し、試料に電圧をかけるため、その電圧や、それによって試料内部を流れる電流が、試料のポテンシャル分布を変化させてしまって正確なポテンシャル分布を測定できないという問題があった。正しいポテンシャル分布を得るためには、その影響を取り除く必要がある。
今回開発したシミュレーション技術では、STM探針と半導体試料の間に電圧をかけた時の影響、特に探針と試料の間に流れるトンネル電流が試料内部にも流れる影響を計算機シミュレーションによって取り除ける。同技術により、STMを用いてポテンシャルや不純物濃度の分布の高精度測定ができるようになり、これまで難しかったナノメーターレベルの正確な測定が可能となることから、次世代トランジスタの開発への貢献が期待されるとコメントしている。