セイコーアイ・インフォテックは、6月25日から27日にかけて東京ビッグサイトで開催された「第25回 設計・製造ソリューション展(DMS)」において、3Dプリンターと、新たに扱う3Dスキャナーや周辺ソリューションを含めた展示を行った。3Dプリンターで製作したさまざまな造形サンプルが並んだ展示に、多くの注目が集まった。

さまざまな3Dプリンターの展示でブースは盛況

CAD・GISのほか、新聞業や印刷業向けの大判プリンターを中心にさまざまなソリューションを提供してきたセイコーアイ・インフォテックが、近年力を入れているのが3Dプリンターだ。石膏タイプのフルカラー造形が可能な3Dプリンター「ProJet x60シリーズ」や、高精細・高精度な樹脂造形ができる「ProJet 3500シリーズ」の販売を手がけてきたが、今回のブースでは、世界で初めてプラスチック材料にてフルカラー造形が可能な新製品「ProJet 4500」を展示した。

多くの人が集まったセイコーアイ・インフォテックのブース

各種3Dプリンターによる多彩な作例を展示

高精度な3D造形に注目

企業の多くは商品開発における設計リードタイムをいかに短期間で行うかという課題を持っている。3Dプリンターはその課題を解決するツールとなるが、使い方はそれぞれだ。

これまでは大きく分けると、プラスチック素材などで精細な構造を再現し、実際の嵌合具合までしっかり確認できるものと、石膏素材などで鮮やかな色表現を行いデザインの仕上がり具合を立体物で確認するためのものがあった。セイコーアイ・インフォテックではこのどちらのタイプも扱っている。

セイコーアイ・インフォテック 営業部 3Dソリューション・プロダクトマネージャー 町田林氏

「セイコーグループ内でも、時計のケース部分のデザイン検証などに、3Dプリンターを利用しており、我々自身が実際のユーザーであるということも強みです。3Dプリンターならば何でも作れるというようなイメージを持っている方もいますが、実際に使っている方はそうではないことを良くご存知ですね。」と語るのは、セイコーアイ・インフォテック 営業部 3Dソリューション・プロダクトマネージャーの町田林氏だ。

手作りによるモックアップや試作金型による試作品製作に比べて、3Dプリンターでの試作はSTLデータさえあればすぐに行える。3Dプリンターを保有することで、外注に出すことによるコスト削減や作成リードタイムの短縮に繋がり、その効果は大きい。さらには内製化することで新製品開発などに関する機密情報の漏えい防止も重要なポイントとなる。今回のDMS展においてセイコーアイ・インフォテックのブースでは実際に使用されるような、時計のケース部分がしっかりと組み合わせられるような造形サンプルなど、多数の試作部品が展示されており、その精度が体感できた。

プラスチック素材を使った3Dプリンターによる時計パーツの試作品

実際にぴたりと組み上がる精度が体感できる

樹脂でフルカラーに対応したエコな新機種「ProJet 4500」

組み上げはできるが色のつかないプラスチックや樹脂素材のものと、色鮮やかな表現はできるが壊れやすく細かい造形が難しい石膏素材のものとの間に相当する、フルカラーで色をつけることができ嵌合の確認もできる3Dプリンターとして登場したのが「ProJet 4500」だ。

「他社の樹脂カラー対応機の多くは、256色などカラーチップから選択する状態です。100万色に対応してグラデーションで発色できることがProJet4500の大きな特徴で、注目されています」と町田氏は語る。

「ProJet 4500」による色鮮やかで精細な造形サンプル

細かいパーツをつなぎ合わせたような造作で、柔らかく動くサンプルもあった

「樹脂素材であるためある程度弾性があり、スマートフォンケースのような少し開いてから戻る、というような動きが必要なものも作れます。また、石膏と違って落としたら割れてしまう、水の中では溶けてしまう、というようなこともありません。ProJet4500はオールインワン設計されており特別な付帯設備も不要なので、これ1台で3D造形が行えます」と町田氏は語る。

柔らかい素材のおかげで、一度広げてから元に戻るブレスレットのようなものも作れる

注目の新製品「ProJet 4500」

マテリアル(材料)がリサイクル可能であるというのも特徴だろう。未使用のプラスチックパウダーは次回の造形に再利用可能であり、ランニングコストを低く抑えることができる。さらに、サポート材も不要であるため、エコロジーで経済的だ。

「素材の料金というのはダイレクトに製作費に跳ね返ります。しかし製品価格に反映できないことも多いですから、こういう部分も皆さんかなり注目されていますよ」と町田氏はブースを訪れる人々の反応を語った。

具体的なプリント方式やマテリアルの扱いも細かく紹介されていた

大判プリンターで培ったノウハウとサポートも魅力

もちろん、展示は3D関連のものだけが行われていたわけではない。3Dプリンターの取り扱いを開始する以前から長く取り扱ってきた、大判マルチファンクションプリンターについての展示も行われた。

「3Dに対して2Dプリンターなどとも呼んでいますが、これらのCAD出力プリンターも進化は続いています。クラウドを活用し、タブレット端末でスムーズにA0やA1サイズの図面を快適に閲覧できるサービスなどと連携し、新しいソリューションも展開しています」と町田氏。

図面出力や電子化などに使われる大判プリンターも展示

タブレット端末を活用したクラウドサービスなどの展示が行われた

長年取り組んできた大判プリンターのノウハウがあるからこそ、3Dプリンターユーザーにとっての大きな魅力もある。それは保守・サポート面での信頼性だ。全国に多くの拠点を持ち、ユーザーを支える体制もできている。

「3Dプリンターも、インクジェットの技術です。我々の長年にわたるプリンターに関するノウハウは、3Dプリンターに対しても提供できます。展示会にいらっしゃる方の中にも、やはりそのあたりを重視してくださる方も多いようです」と町田氏は語った。

3Dスキャナーも含めてトータルでの3D事業を加速

今後新たに扱うものとして3Dスキャニング設計システム「Geomagic Capture」の展示も行っていた。

丸いターンテーブル内にスキャン対象を設置し、横に置いた3Dスキャナーでキャプチャーし取り込んだ3D画像情報をもとにCADデータ(ソリッドモデル)化するデモンストレーションも実施。多くの人が足を止めていた。

3Dスキャニング設計システム「Geomagic Capture」

「Geomagic Capture」による3Dモデル作成も実演

「今後は各種3Dプリンターとともに、3Dスキャナーも含めたトータルな3D事業を展開して行きたいですね」と町田氏。昨年から続く3Dプリンターブームのおかげでユーザーにもある程度の知識を持つ人が増えた結果、セイコーアイ・インフォテックの扱う製品の特徴や高性能さを十分に理解してくれる来場者も多かったということで、十分な手応えを感じたようだった。