「10Gイーサはまだ早い」「10Gイーサはコストがかかるのでは」
こんな風に考えているネットワーク管理者はまだまだ多いだろう。しかし、中小規模の企業ネットワークでも、高精細な動画や画像といったサイズの大きなリッチコンテンツが増え、ネットワークトラフィックが増大している。そのため、より高速なネットワークを構築できれば、生産性の向上が見込める。
また、ここ数年、データセンターなどの大規模なネットワークでは、今回紹介するNETGEARの製品のように、中小規模のネットワークでも十分に手が届くリーズナブルなコストの製品が登場してきたことで、10Gイーサネットの導入がどんどん進んでいる。
本稿では、これから10Gイーサネット環境の導入を考えている中小規模~中堅企業ネットワーク向けに、具体的な構成例を提示しよう。
ネットワーク要件
「小規模ネットワーク」と一口に言ってもいろいろな構成が考えられるが、今回は大容量のデータを扱うデザイン事務所のネットワークを考える。想定するネットワーク要件は以下のとおりだ。
・オフィスは1フロア
・社員は10名程度
・サブネットは1つ
・メールや勤怠管理などはクラウドベースの業務システムを利用する
・FTTH(1Gbps)によるインターネット接続を行う
ネットワークに接続する端末は、以下を想定している。
<表1 ネットワークに接続する端末>
種類 | ネットワークインタフェース | 台数 | 備考 |
---|---|---|---|
業務用PC | 1000BASE-T、IEEE802.11b/g/n | 10 | モバイルノート |
デザイン業務用PC | 10GBASE-T | 2 | デスクトップ |
ネットワークプリンタ | 1000BASE-T、IEEE802.11b/g | 1 | |
NAS | 10GBASE-T×2 | 1 | 容量は4TB HDD× 6台(RAID6構成) |
デザイン業務を円滑に行うためには、大容量ファイルへの高速なアクセスが重要だろう。そこで、デザイン業務のために10GBASE-Tのネットワークインタフェースを持つ高性能なハイエンドデスクトップパソコンを導入していることを想定している。また、業務のファイルを一元管理するために、やはり10GBASE-Tのネットワークインタフェースを持つハイエンドのNASの導入を想定している。
ネットワーク構成例
以下の図が、上記の要件を満足するためのネットワーク構成例だ。コンセプトは「大容量ファイルへの高速アクセス」である。
<表2 デザイン事務所 ネットワーク構成機器>
機器名 | 台数 | 単価(税別) | 金額(税別) | 備考 |
---|---|---|---|---|
アンマネージプラススイッチ XS708E | 1 | 19万円 | 19万円 | 8ポート、10GBASE-T |
アンマネージプラススイッチ GS116E | 1 | 2万円 | 2万円 | 16ポート、1000BASE-T |
ReadyNAS 716X | 1 | 82万円 | 82万円 | 2ポート10GBASE-T、4TB SATAディスクパック |
ギガビットルーター R7000 | 1 | オープン | オープン | IEEE802.11ac対応 |
*上記単価および金額は定価ベースで、市場価格はさらに安い価格で取引されている。
ネットワークの特徴
この構成例の一番のポイントは、デザイン業務用PCからNASへの10GBASE-Tによる高速なファイルアクセスを実現している点だ。ReadyNAS 716Xには、10GBASE-Tのネットワークインタフェースが2つ備わっている。この2つのインタフェースをリンクアグリゲーションでまとめて負荷分散できる。これによって、デザイン業務用PCからNAS上のファイルに同時にアクセスがあったとしてもストレスなく、ファイルを扱うことができるはずだ。ネットワークがボトルネックになってしまって、デザイン業務が滞る心配がなくなるだろう。
論理構成は、シンプルに1サブネットにしている。セキュリティを向上させるなどでサブネットを増やす場合は、XS708E、GS116EともにVLANに対応しているのでVLANを追加すればいい。そして、VLAN間の通信を行うために別途、レイヤ3スイッチを導入すれば、サブネットを増やすこともできる。
また、構成図では業務用PCは有線接続としているが、ギガビットルーター R7000は無線LANアクセスポイント機能も備えている。業務用PCを無線LANで手軽に社内ネットワークに接続するような構成も可能だ。R7000はIEEE802.11acにも対応しているので、将来的にPCの無線インタフェースをアップグレードすれば、より高速な無線LANの通信も実現できる。
このネットワーク構成を実現するための機器の設定は、ほとんど必要ない。R7000でインターネット接続のためのアカウント情報や、ReadyNAS 716XとXS708E間のリンクアグリゲーションの設定が必要になるぐらいだ。これらの設定もGUIのウィザードに従えば簡単にできる。
まとめ
今回は、大容量のデータを扱うデザイン事務所を例にしているが、それ以外の業務を行うためのネットワークでももちろん10Gイーサネット導入の効果的だ。ネットワークの速度は高速であるに越したことはない。今回、例として選定したXS708Eであれば、20万円を切る価格で8ポートの10Gイーサネットポートを備えている。リーズナブルなコストで高速なネットワーク環境を構築するための製品であると言えるだろう。
次回は、中規模ネットワークを対象に取り上げる。