BI・データ活用ソリューション「Dr.Sum EA」やBI・ダッシュボード「MotionBoard」などを提供するウイングアーク1stが、今年も名古屋・大阪・東京の3都市で情報活用セミナー「夏の情活塾」を開催する。

ここでは、7月4日に愛知県名古屋市のミッドランドスクエアで開催予定のセミナーから、京都の老舗宇治茶専門店である伊藤久右衛門の事例講演「情活先進企業に聞く 13期連続成長を支える情報活用の実践とその秘訣」の概要を見ていこう。

データの複雑化と処理量の限界がボトルネックに

伊藤久右衛門 事業統括本部 本部長の広瀬穣治氏

京都にある伊藤久右衛門は、江戸後期である1832年(天保3年)の創業時から代々受け継がれてきた茶づくりの技術を活かし、1952年に設立された老舗の宇治茶専門店だ。宇治田原では、現在も創業時の茶園で茶づくりが続けられている。

同社では日本が誇る宇治茶の魅力、その味や香りがもたらす豊かな時間・空間をより多くの人に伝えるべく京都府内に3店舗を構えるほか、カタログとECサイト経由で宇治茶や抹茶スイーツの製造・販売を展開している。

同社では中心事業がECサイトへ移行した際、市場の拡大とともにデータ量が一気に増加した。当時の様子について、事業統括本部 本部長の広瀬穣治氏は「市場や弊社環境などに対応する業務システムが少なかったため、データベースソフトウェアを活用して社内で独自の基幹システムを開発。売上情報や在庫情報、顧客情報などすべての業務を管理し、全社員が業務の中心として利用していました」と語る。

しかし、ここで大きな課題に直面する。事業の成長やサービスの多様化に伴いデータの取り扱いが複雑化。オールインワンの基幹システムで複数処理を行うとシステムに負荷がかかり、ピークタイム時に関連業務が止まってしまうという事態が発生したのだ。

「現場では更なる業績の成長が見込める状況にもかかわらず、システム負荷の軽減を目的とした業務の制約が行われており、本来とるべき戦略が思うようにとれませんでした。その表面上の原因はデータの複雑化と処理量の限界にあったのです」と広瀬氏。そこで同社ではデータの整理や分類を通じて、データ活用への第一歩を踏み出したのである。

データ活用に向けた基板構築と「Dr.Sum EA」の導入

伊藤久右衛門では、まず最大のボトルネックであったデータに対しての知見を深めるべく、課題解決に向けた業務の整理や運用基盤の設計を開始。その過程において、大規模で多様なデータを高速処理できるデータ活用サービスの導入を決定した。

サービス選定で重視したポイントは「現場主体での高速集計を実現できる」「システム部門以外でも作り込みが可能」「使用人数に対するコストメリット」という3つ。この条件に見事合致したのが、ウイングアーク1stの「Dr.Sum EA」だったそうだ。

広瀬氏は「データ活用を特定部門だけの役割にするのではなく、業務プロセスに組み込むことで現場の社員たちが自ら考え、動かすことのできる仕組みであるかが重要でした」と、現場目線での取り組み方針を語る。

実際、Dr.Sum EAは現場にとって身近なExcelなどを使って分析・集計できる点がデータ活用の浸透に大きな役割を果たすほか、使用者の入れ替わりや使用人数に応じたコスト体系のメリットも魅力だったという。

Dr.Sum EAの導入は、伊藤久右衛門にとって当初の課題解決以上のメリットをもたらした。従来のデータ範囲では十分に把握できなかった顧客の傾向・動向などを把握できるようになったことに加え、処理速度の高速化によって迅速な分析結果の入手が可能に。また、大規模データや定性的な情報を合わせて分析できるようになった結果、仮説検証の精度が向上。これにより、仮説から外れた異常値の発見が容易になり、将来予測の精度が向上する成果が得られている。

「これらの分析成果を実際の業務に活用することで、現場の意思決定の高度化・迅速化、オペレーションの最適化・効率化に貢献しています。さらに、データによって今まで見えなかった傾向や動向を可視化し、そこから埋もれていたニーズを発掘できるため、新たな商品やサービスの開発・投入につながっていくなど、新規市場の開拓をはじめさまざまなプラスの効果を生み出しています」と、広瀬氏は満足そうに語った。

経営課題の把握とデータ活用領域の明確化が鍵

伊藤久右衛門にとって、ビジネスにおけるデータ活用の目的は“経営品質の向上”にある。広瀬氏は「データを利活用していかに複雑な分析や数理計算がなされようとも、その目的から外れてしまえば、もはやビジネスではなく学術的な領域になります。

データ活用による経営品質の向上は、言い換えれば“業績への寄与度”であり、それはデータを起点に経営課題の解決ができる組織作りに必要不可欠といえるでしょう」と、データ活用に対する考えについて語る。

また、データ活用のポイントについては、いきなり未知の分野や新たな市場を開拓するのではなく、まず最初にデータを扱える組織基盤の整備が重要だという。その上で、既知の事実に基づいた目の前の課題解決から実施していくわけだ。確かに、データ活用の目的がコストに見合う効果を発揮できなければ本末転倒となってしまう。

そこで“情報活用の目的”と“構築するためのコスト”が現実的なものか判断し、まず結果を出してからその文化を根付かせると、活用への入口につながる。現状の経営課題を把握すること、そしてデータ活用の領域を明確化すること。この2つが重要な鍵を握っているそうだ。

最後に広瀬氏は「弊社では当初、データ処理が業務を圧迫していました。これをDr.Sum EAの導入で活用へ転じることで、経営品質に通じる業務プロセスの向上やデータの可視化を実現し、情報活用の基盤が構築できました。また文化が浸透していく過程で、これまでより一層、自部門の業務範囲や部門間の連携、経営や組織を意識した意思決定の力が現場において発揮されるようになりました。データ活用の導入から現在に至る経緯を、当日は社内の最新事例を交えてご説明したいと思います」と、セミナー参加者へ向けて熱いメッセージを送る。

伊藤久右衛門のデータ活用に興味のある方は、ぜひ参加していただきたい。