岡山大学は、京セラメディカルと共同で開発し、2007年11月より岡山大学病院を中心に臨床応用を行ってきた関節破壊の程度が重症なものや、通常の人工関節では再建が困難であった肘関節などに適用可能な次世代人工関節に、良好な術後成績が認められたと発表した。

同成果は、同大大学院医歯薬学総合研究科(医)の西田圭一郎 准教授らによるもので、詳細は米国科学雑誌「J Shoulder Elbow Surg」に掲載された。

同大では、1980年ころから日本人骨格に適した人工肘関節の開発を開始、1986年ころから臨床応用が図られてきた。しかし、骨性に強直して不動となった関節、重度の骨破壊・骨欠損により安定性が失われた関節、上腕骨遠位端の重度の粉砕骨折で通常の骨接合術では再建が困難な関節、過去に行われた人工関節が破綻した例に対する再置換術などの再建は困難で、そうした病態に対しては海外製品を用いて再建が行われてきたものの、サイズの問題や、手技の煩雑さの問題もあり、合併症の発生などが問題となっていた。

今回報告された次世代人工関節は、そうした課題を解決することを目的に開発されたもので、「半拘束型の人工関節であり、靭帯組織が破綻した関節でも再建が可能」、「比較的骨格の小さい日本人の関節再建に適している」、「上腕骨側コンポーネントの緩みを防止するための前方フランジを組み立て式として術中の骨移植を不要にした」、「スナップイン方式を考案し、上腕骨、尺骨それぞれの人工関節を骨内にセメント固定後に安全に関節部の組み立てが可能である」といった特徴を有しているという。

実際に、同人工肘関節を用いて肘関節の再建を行った関節リウマチ患者のうち、2年以上経過観察が可能であった17肘について平均約4年の臨床成績を解析したところ、国際的な基準で術前58点であった肘関節は手術により最終観察時平均97点まで改善していることが確認されたとする。また合併症は1例1肘のみで、術後の打撲による上腕骨内顆骨折であり保存的に復したという。

なお、同人工関節は、2014年4月より量産体制に入っており、今後全国規模での使用が期待されるという。

岡山大学と京セラメディカルが開発した次世代人工肘関節の特徴