北海道大学(北大)は6月26日、LSIの高密度化のための3次元微細配線や、メタマテリアルの作製技術などに応用が期待される配向性銀ナノプレート構造を、簡便なレーザ照射によって実現することに成功したと発表した。
同成果は、同大 電子科学研究所の三澤弘明教授、上野貢生准教授らによるもの。中国吉林大学の孫洪波教授と共同で行われた。詳細は、「ACS Nano」に掲載された。
これまで、サイズや形状、あるいは配向性の揃った金属ナノ構造を作製する場合、光を用いることによる作製は困難で、電子ビームリソグラフィなど精密なナノ加工技術が必要だった。それは、光には回折限界があり、光の波長よりも極端に小さい空間に光を絞り込むことができないためである。つまり、加工サイズは波長で決まってしまう。しかし、今回の研究では、光と金属ナノ微粒子が共鳴することによって生じるプラズモンの局在光電場を用いることにより、回折限界よりもはるかに小さいナノ空間に、レーザ照射によって金属ナノ構造を簡便に作製することに成功した。
具体的には、還元剤や保護材として作用するクエン酸ナトリウムと硝酸銀を含む前駆体溶液(若干アルカリ性)を調整し、前駆体溶液とガラスの界面に1.2×10-13秒の短い時間だけ光ることができるフェムト秒レーザを集光して1秒間に8200万回照射すると、照射した空間よりもさらに小さいナノ空間に銀のナノプレートが出現することを見出したという。
同技術は、銀ナノプレートの集合体を任意のサイズ・形状で基板上に作製可能であることから、LSIの高密度化のための3次元微細電気配線やメタマテリアルの作製技術などに応用が期待される。また、高い光電場増強効果を示す銀ナノ構造体を広範囲に作製できるため、表面増強ラマン散乱分光計測などを用いた化学センサや太陽電池の光アンテナ系など、さまざまな応用が期待されるとコメントしている。