理化学研究所(理研)は6月24日、金属電極に接触した酸化グラフェンの化学構造を理論的に調べ、エノラート構造という高い反応性の化学種であることを発見したと発表した。
同成果は、同所 Kim表面界面科学研究室の鄭載勲 国際特別研究員、林賢燮 国際特別研究員、呉準杓 基礎科学特別研究員、金有洙 准主任研究員らによるもの。詳細は、米国の科学雑誌「Journal of American Chemical Society」のオンライン版に掲載される予定。
炭素原子1層の厚さで網状の物質であるグラフェンは、優れた物理的・電子的性質を持つ。グラフェンを利用した高機能な電子デバイスを作成するには、グラフェンの電子的性質の制御が重要になる。現在、ほとんど電気抵抗がないグラフェンに半導体の電子的性質であるバンドギャップを持たせ、電流の流れを制御する方法の開発が待たれている。中でも、グラフェンの化学修飾が最も有望な方法として研究され、特に、酸素と反応させることでつくる酸化グラフェンは、汎用性の高さや他の官能基への拡張性に優れているため、注目されている。しかし、形成される炭素-酸素結合がどのような構造を持っているかはいまだに明らかではなく、これまでは、酸素原子がグラフェン表面の炭素原子2つと結合しているエポキシ構造であるという説が有力と考えられていた。
研究グループは、密度汎関数理論という高精度の理論計算を行い、銅などの金属電極にグラフェンが接触した場合について、酸化反応の反応性、生成物の構造安定性、および電子物性の詳細を調べた。その結果、接触しているグラフェンを酸化させると、酸素原子1つがグラフェン炭素原子1つと結合しているエノラート構造が、エポキシ構造より安定に生成されることを明らかにした。
今回の成果により、体系的にグラフェン表面の化学修飾が行えるようになる。今後、他の官能基への展開も可能になり、多様な物性制御の実現が期待できるとコメントしている。