京都大学(京大)は、糖尿病ACIラットの皮下に塩基性繊維芽細胞増殖因子を含むアガロースロッドを埋め込むことで、移植された細胞や組織片への免疫反応が起きない免疫特典部位を作成することに成功し、同部位へ移植したF344ラット膵島が免疫抑制剤を投与することなく生着し、血糖値が正常化し、結果、糖尿病を治療できたことを確認したと発表した。
同成果は、同大 再生医科学研究所の岩田博夫 教授らによるもの。詳細は米国移植学会およびアメリカ移植外科学会が提供する「American Journal of Transplantation」電子版に掲載された。
近年、インスリン依存性糖尿病患者に対するインスリン分泌細胞の移植治療が試みられているが、移植細胞を拒絶反応や自己免疫反応から保護するための免疫抑制剤の投与が必要であったり、その副作用に注意する必要があるなどの課題があった。
今回、研究グループは、糖尿病ACIラットの皮下に塩基性繊維芽細胞増殖因子を含むアガロースロッドを埋め込むことで、移植された細胞や組織片への免疫反応が起きない免疫特典部位を作成。また、同部位へ移植したF344ラット膵島(インスリン分泌組織)は免疫抑制剤を投与することなく生着し、100日を超える観察期間中で血糖値が正常化することも確認したという。
また、研究グループでは、インスリン分泌組織である膵島そのものの確保については、ヒトiPS細胞から高効率で分化誘導が可能になりつつあり、1-2年のうちに大量の膵島を確保できるようになることが期待されるとしており、今回の技術を活用することで、免疫抑制剤の投与を必要とせず、皮下への移植であるため、もしもの時でも容易に取り除くことができ、かつiPS細胞による大量の膵島確保ができるようになれば、望むすべての人に治療を提供することが可能になると期待を述べている。