京都大学(京大)は6月23日、ガボン共和国ムカラバ国立公園にて、野生のゴリラがフットボール大の果実「Treculia africana」を分配している様子を18例観察することに成功したほか、大人同士の間でも果実を分配している様子も確認したと発表した。

同成果は、同大 理学研究科の山極寿一 教授、同 井上英治 助教、同 坪川桂子 博士課程学生らによるもの。詳細は国際学術誌「PRIMATES」に掲載された。

これまで、類人猿のうち、果実食のオランウータンやチンパンジーでは、食物を分配する行動が報告されていたが、葉や茎などを食べるゴリラではそうした報告はほとんどおらず、分配される場合でも、親と子供の間に限られていた。

今回の発見では、フットボール大の果実が熟し、地面に落ちたのを手にしたゴリラの周りにほかのゴリラが集まり、それを少しずつちぎって地面に置いた破片を拾って食べる様子も観察されたほか、発情したと思われるメスが大きなオスから分配を受け、その2日後に交尾をした事例も確認されたという。

食料の分配行動は、人間以外の霊長類にはまれにしか見られないことから、人類の進化の初期から深く関わってきた行動として考えられてきたが、どのようにしてこうした行動を発達させてきたかはよくわかっていない。近年の仮説でば、霊長類300種の中で、大人の間に食物の分配が見られる種には必ず親子の間、あるいは養育者と子供の間でも分配が見られることから、そうした養育目的ではじまり、それが大人の間の社会交渉に転用されたとされているほか、子供の成長が遅いヒト科の類人猿や多産系の種に良くみられることから、長い養育や多産による共同保育が食物分配を促進したとも考えられてきた。

今回の成果は、類人猿のすべてで希少で栄養価の高い食物が分配されることを示したもので、交尾などの行動も含め、ゴリラにもチンパンジーと似たような社会的機能があることを示唆するものであると研究グループは説明するほか、チンパンジーのように口や手から直接受け取るのではなく、一度、地面に置いて相手にとらせるという行為の違いにゴリラとチンパンジーの社会の特徴が反映されており、人類の食物をめぐる社会進化を考える上での学術的意義があるとしている。

野生のニシローラドゴリラ (C)京都大学