東京工業大学(東工大)は、中性子が非常に多い原子核に現れる特異構造「中性子ハロー」が、中性子数が過剰なマグネシウム同位体「マグネシウム37」(37Mg)にも現れていることを発見したと発表した。

同成果は、同大大学院理工学研究科の小林信之院生(現 東京大学学振研究員)、中村隆司教授らと理化学研究所、英サレー大学、日本原子力研究開発機構、米国ウェスタンミシガン大、カナダ・セントマリー大、韓国ソウル国立大、フランス・カン素粒子原子核研究所(LPC-CAEN)、東京大学原子核科学研究センター(CNS)、東京理科大学で構成される研究グループによるもの。詳細は6月18日付の米国物理学会の学術誌「Physical Review Letters」電子版に掲載された。

中性子ハローは1987年に見つかった「原子核の半径は質量数の3乗根に比例する」といった法則を破る特異な構造だが、2009年以前は質量数20未満の原子核にしか見つかっておらず、理化学研究所のRIビームファクトリ(RIBF)が完成した2006年以降、近年になってようやく22C、31Neがハロー構造を持つことが示された。

今回の研究では、中村教授らが31Neの微視的状態を捉える際に活用した、核力とクーロン力の感度の異なる力で分解(分解反応)する手法を未知の核に応用することで、1996年に理研が同定した37Mgの構造調査などが行われた。その結果、37Mgが中性子ハローであることが判明したほか、中性子の魔法数"28"が破れており、強く変形していることも判明したとのことで、研究グループは、37Mgと同じく25個の中性子数をもつ安定核47Ti(陽子数22、中性子数25)では最外殻の中性子軌道はf軌道であり、魔法数28が破れていないということと対比されるとコメントしている。

また、今回の結果について、さらに中性子が多い原子核でも「中性子ハロー」が存在する可能性が高まったとしている。

核図表(原子核の地図)。 横軸が中性子数、縦軸が陽子数(原子番号)を表わす。青色で表されているのがハロー構造をもつ原子核で今回新たに中性子ハロー構造が同定されたマグネシウム37(37Mg)はハロー構造が発見されている原子核の中で最も重いものとなった